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書評集

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大岡信『現代詩人論』


 大岡は、自らの世代を「感受性の祝祭」の世代であると規定している。つまり、「荒地」「列島」へのアンチテーゼとして、社会的、思想的関心を持たず、ただ感受性を豊饒化させていく世代である。そして、その感受性重視の詩的態度は、彼の批評にも表れている。『現代詩人論』は、まさに感受性の祝祭としての批評なのである。
 だが、大岡は周到だった。彼には社会的視点や実存的視点、そして理論的態度が欠けていたが、批評する際に、感受性を論理性と実証性で補強したのである。それゆえ、彼は詩人や詩作品を前にして奔放で細密な感受力を披露するが、それは決して妄想や恣意に流れず、絶えず詩人の実人生や作品の実際の在り方に即した実証性を保ち、また、読み手を納得させる論理の筋道を常に保ち続けた。
 つまり、大岡がやった批評というものは、作者と読者との生の交渉、その原初的で複雑でめまいにまちた官能的な相互作用、それを巧みに言語化・論理化するという作用である。そこに社会や理論の入り込む余地はない。なぜなら作者と読者とが真に呼吸しあうためには社会や理論などといった外部的で既成のシステムというものは無用でしかないからだ。また実存的な視点は深刻すぎて作品の浮動的なあり方をとらえきれない。
 感受性の祝祭としての批評、その可能性と限界を、現代のわれわれは確かめる必要がある。そしてあるべき批評を見つけ出していくのである。

作品名:書評集 作家名:Beamte