燈籠くんの怪奇的高校生活(仮称)
「それじゃ・・・・・・私も海人と一緒の部活に入る!」
宵は勢いよく立ち上がり叫んだ。
勿論、クラスの同級生たちが一斉に視線をこちらに向けたのは言うまでもなく、直後に宵が顔を赤らめて椅子に座り直したのも言うまでもない。
ちなみに男子陣から冷やかしの声がかけられたのも無論、言うまでもない。
俺は男子陣の冷やかしを「羨ましいだろ? 美少女幼馴染み萌えるだろ?」なんて意味を込めながら軽くあしらいつつ宵との会話に戻った。
「でも宵、怖いのとか恐怖系とか怪奇属性嫌いでしょ? 大丈夫なの?」
「多分・・・・・・大丈夫・・・・・・じゃないけど、我慢するもん」
宵は大丈夫と感じさせる表情を一切せずに答えた。
「無理しなくていいよ。こんな面倒くさい生活に付き合わなくても」
ちなみに俺は口ではこう言っているけど、止める気なんて一切ない。
俺に唯一、癒しという人間なら誰しもが求める安楽の時を与えてくれる存在の宵と一緒にいれるんだから、止める気なんて微塵もない。例え世界が滅びようともな。
これは言い過ぎか。
それに今の俺はアカデミー賞で主演男優賞も狙えるほどの演技力を発揮している。
決して騙してなどいない。これは━━演技だ。戦いなのだ。もう訳が分からないな。
「海人が嫌なら違う部活に入るけど・・・・・・」
「断じて嫌じゃないです!」
今度は俺が勢い良く立ち上がりながら叫んでしまった。
勿論、またもや視線がこちらへと集中する。
お前たち、視線を集中する前に自分達の会話に集中しなさい。
一先ず俺は、一回深呼吸をはさみ心を落ち着かせて宵との会話に戻った。
「俺は結羽海さんの部活に入ることにするよ」
「海人? 話戻りすぎだよ?」
言葉通りに戻ってみたが、あえなく突っ込みを入れられてしまった。
「とりあえずさ、今日の放課後部室に行くか」
「うん」
窓際の席に差し込む朝日が眩しい。
放課後まで残り6コマ。
とりあえず俺は一眠りすることにした。
作品名:燈籠くんの怪奇的高校生活(仮称) 作家名:たし