燈籠くんの怪奇的高校生活(仮称)
「━━狐火」
結羽海さんは呟いた。この状況がさぞかし愉快でたまらないというように。
「くくく、私たちは滑稽だね。いつから山中の道なき道を歩いていたのかな」
結羽海さんがそう言い、俺を含めた三人は一斉に辺りを照らした。
照らされたのは嫌と言う程の木、木、木。
それを理解した瞬間に背筋が音を立てて凍った気がした。
あまりの衝撃に声帯すらも麻痺状態へと変わる。
「狐火とはね、人を惑わし迷い込ませる力もあるんだ」
結羽海さんが言う『狐火』は一つではない。まだ少し離れているが分かる。その数は無数で、提灯のように行列を作っているのが。
ゆらゆらと、俺たちを嘲笑うかのように浮かび上がっているのが。
━━分かる。
「狐が嫁に入るようだね」
結羽海さんが言った。
いや、俺たち三人に告げたのだ。
怪奇現象という奇跡に等しい現象の始まりを、告げたのだ。
「マジ・・・・・・す・・・・・・か」
宇城丞は、実際に怪奇現象に会うのは初めてなのだろう。膝が笑い、歯がカチカチと音を鳴らしている。
宵に至っては言うまでもない。俺にしがみつき、身体を震わせている。
作品名:燈籠くんの怪奇的高校生活(仮称) 作家名:たし