小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

燈籠くんの怪奇的高校生活(仮称)

INDEX|29ページ/39ページ|

次のページ前のページ
 

 「もうある程度は分かってくれたかな? この小さな記事の男性は、多発する変死の始まりの男性だったんだ。国はあまりにも多発する変死をおおっぴらにしたくなかったみたいだけどね。そもそも隠そうとして隠せるほど小さいことでもない。結局はこうして私たちに暴かれる運命なんだからね。でもね、面白いのはここからだよ」
 「えー! 何ですか何ですか何ですかー!? もう楽しみすぎて逝ってしまいそうです!」
 「勝手に逝け、変人」
 宇城丞のテンションは、結羽海さんの話同様最終局面を迎え始めていた。最早、口を金輪際開かないでほしい。女の子が会話の中で不埒な単語なんか使うんじゃない。宵が怖がりつつも戸惑っているだろうが。
 ・・・・・・ま、新鮮だからいいけど。
 「くくく、それは天候さ」
 「天候?」
 天候ってあれだよな。天気のことだよな。転向でも転校でも天工でもなく、天候だよな。
 「そう、天候。宇城丞ちゃん、この世で一番不思議に思う天候は何だい?」
 「お天気雨ですかね? なんか晴れているのに雨が降るのが不思議だな―って思います」
 宇城丞は即答した。
「正解だよ、宇城丞ちゃん。宇城丞ちゃんは観察力がるようだね、実に感嘆だよ。お天気雨、またの名を日照雨。雨粒が地面に到達するまでに雨雲が消滅・移動した場合に発生するもの。特に雲が対流雲だと、降雨後十分程度で雲が消えるため、天気雨が発生しやすい。また、遠方で降った雨が強い横風に流されることで天気雨になることもあるんだ。特に山間部では山越えの際に雲が消えてしまうので、山越えの風に雨粒だけが乗って飛んでくることになり、その場合、天気雨を見ることができるんだ」
知ろうとも思わなかったし、知らなかった。
でも、このお天気雨と怪奇現象が一体どのように結びつくのかなんて見当もつかない。
「そして、だ。変死が多発した某県では、天気雨も多発していた。しかも死亡者のほとんどが山間部や山のふもとの住民だった。この情報はメディアにすら公開されていない不可解な現象だよ。何より不気味だからね。調べ上げた人間たちは、この現状に気がつくことが出来るが住民たちは気づかなかったんだ。宇城丞ちゃんのように『不思議だな』と思うだけでね」
 確かに不気味だ。変死の多発。珍しい天候の多発。
 確かに密接な関係があることくらいは俺にも分かった。
 というか、メディアにも公開されていない情報を得るのか、あの情報屋は。
 言うのが遅くなってしまったが、結羽海さんの言う情報屋と俺は面識がある。結羽海さんとは古くからの知り合いらしく、鬼に笑われたときに協力してくれたのだ。
 「さて、ここでお天気雨の言い伝えを一つだけ紹介しよう」
 結羽海さんは不気味で不敵に笑いながら言った。

 「狐の嫁入りだよ」

 結羽海さんはそう言い切った。



四月某日。
俺は怪奇現象解決部、略して怪決部に入部してからの最初の本格的な活動をしていた。部員探しでも、世間話でもない。
そう、今まさに、

━━絶讚、深夜徘徊中だ。
入部してから約十日。俺は早速補導対象となる行動を取っていた。
宇城丞のように山中を丑三つ時に散歩するような風変わりな趣味がなかった俺は、健全な中学三年間を送ってきたわけだ。
深夜徘徊など一度もしたことがないし、しようとも思ったことがない。
しかし、だ。初めての深夜徘徊。普段は出歩かない時間に外にいるという状況は不思議と俺の胸を高鳴らせたはずだ。
━━この場所じゃなかったら。
俺たちが住む場所の隣の隣に位置する某県。変死が多発した不可解な土地。天気雨も多発した山のふもと。
そう、俺たちは深夜〇時過ぎに山道を徘徊しているのだ。
もちろん街灯なんてない。
もう、いつ幽霊やら化け物やらが出てもおかしくない雰囲気を醸し出している。
右手に持ったLED式の懐中電灯だけが便りだ。
「いい加減怖いわ!」
「鬼と出会った君が何を言ってるんだい? 伝説級の化物と出会った君が」
「確かにそうだな!」
あの時の恐怖に比べたらこんなの全然余裕だな。
「ねぇ、麗華さん、海人・・・・・・帰ろうよ…何か出そうで怖いよ・・・・・・」
俺の一歩後ろを歩く宵が、俺の上着を少し引っ張り、俯きながら呟いた。
というより宵は山道に入ってからずっとこうだ。俺の服を掴み、俯きながら歩いている。
やっぱり女の子はこうでなくちゃ。
「宵ちゃん、何か出そうだから楽しいんじゃないか!」
宇城丞は言った。
本当に女の子らしくもなく男らしくもない、変人らしいやつだな。