燈籠くんの怪奇的高校生活(仮称)
目の前に広がっていたのは━━桃源郷、ではなく見慣れた長机にソファー、コーヒーメーカーが存在するシンプルな部室。
ただ予想外だったのは、宵と宇城丞が先に部室に来ていた事くらいだ。
「早いね、二人とも。そして偉い。その出来立てのコーヒーは私の為かい?」
「はい、結羽海さんが来た時には飲めるように」
宵の近くに置かれたコーヒーメーカーは、赤ランプが点灯し、完成の合図を出していた。
「ありがとう。何処かの誰かさんとは大違いだよ。滑稽な話だね」
「悪かったな」
宵が出来た子なだけだ。 宇城丞は知らんけど。
「部長ー! 早く話聞かせてくださいよー」
ほら、宇城丞も差ほど変わらないじゃないか。
「宇城丞ちゃんは、クライマックスを始めに持っていきたいのかい?」
「だって始まりはいつもクライマックスじゃないですか」
「くくく、分かっているじゃないか。それじゃ今日は無駄話の何も含まれない有意義な話から始めようか」
そう言った結羽海さんは、通学鞄から丁寧に折りたたまれた新聞を取り出した。ふと、目に入った日付は、今日の日付を指していた。
「ここに新聞がある。さて、この新聞の何が重要か分かるかい?」
「・・・・・・分からないな」
「まぁ、そうだろうね。まず知っていてほしいのが、この新聞は去年の今日の新聞だということ」
結羽海さんに言われ、もう一度日付を見てみると今年の年号ではなく、確かに去年の二〇〇九年を指していた。
「その去年の新聞が何か重要なんですか?」
宵が、結羽海さんが手に持つ新聞を覗きこみながら言った。
「この新聞で重要なのは一面を飾った記事なんかじゃなく、ひっそりと書かれた記事だよ。一面を飾っているのは消費者の目を向けるための話題性に捕われた記事がほとんどだからね。つまらないにも程がある」
そう言いながら結羽海さんが、新聞を捲り、すぐに手を止めた。
「ここを見てくれ」
そう言われ俺たち三人は、一斉に小さな記事へと目を向けた。
そこに書いてあった内容を要約すると、
作品名:燈籠くんの怪奇的高校生活(仮称) 作家名:たし