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聖霊学園

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「お、面白いってお前……」
ニヤリと笑う瑠璃に、瑠音は冷や汗をかいた。
「僕を敵に回したこと、後悔させてやる」
ラピスラズリの瞳が復讐色に染まる。焦る兄の声が、瑠璃の耳に届くことはなかった。
「詳しい情報集めは僕がやるよ。瑠音兄ぃはそのまま望璃さんと潜伏捜査を続けてて」
冷めた目で瑠璃はそれだけ言うと、“瞬間移動”で自室に戻った。
「あーもうどうしよう!!あいつ絶対花澤に一矢報いるつもりだよ!!」
瑠音が喚き立てる。瑠璃はいつも、瑠花のことになると変に冷静になり変に周りが見えなくなるのだ。
9年前のあの日からずっと――瑠璃と瑠花は互いに依存し合って生きている。
お互いにもたれかけ合って生きているから、片方の存在が消えると支えを無くし倒れる。そこを何とか支えてやるのが兄としての自分の役目だと瑠音は思っていた。
「騒ぐなよシスコン」
「るっせ、」
貴文にからかわれて瑠音はそっぽを向いた。
「瑠花は何を思って黙って虐められてたのかしら」
鎖耶に聞かれ、陸はムスッとした。
「さあな」
「機嫌悪いわね」
「トラウマ刺激されたから」
「…あぁ、」
鎖耶は陸が機嫌の悪い理由に合点がいった。
陸は小学生の頃、市内で有名な悪餓鬼だった。しかし毎日喧嘩ばかりしていた陸にも、親友がいた。長い黒髪が綺麗な、葛西静波(カサイセイハ)という少女。
特に共通点がある訳ではなかったが何故かしら仲の良かった二人は、しかし行く中学校は違った。
静波は私立に生き、陸は近くの公立。一緒に遊べる頻度は大幅に減った。
それでも仲の良さは小学校の頃から変わらなかった。
陸が不良と喧嘩しているとき、静波はクラスメートに虐められていた。その、妖しい美しさを理由に。
ある日静波は自分の手首をカッターで切り自殺した。陸宛てに、遺書が書かれていた。
遺書の内容は、陸とあまり遊べなかったこと、虐めのことを相談しなかったこと、先に死んでしまうことなどを謝罪するものだった。陸は自分を恨んだ。何故気付けなかったのかと。陸は自分の心の棘で自分を傷つけた。自分の心をいばらでがんじがらめにして、自分を戒めた。
死とは残酷なものだ。死んでしまったら何もできない。謝ることも、話し合うことも――あの笑顔を見ることすら、叶わなくなる。
陸に“力”が目覚めたのは、彼女の遺書を呼んでいるときだ。陸の“力”は草。彼女の分も生きると誓った陸は、どんなにカッコ悪くても、雑草のように生きてやると誓った。
「俺は、誰かが虐められるのを見るのは嫌だ」
「…そうね。私も同じよ」
吐き捨てるような陸の声に、鎖耶は同意する。
「誰かが虐められるくらいなら俺が代わりに虐められてやる」
これには、流石の鎖耶も同意しかねた。これに同意することは、陸の心に土足で入り込むようなものだと気付いたから。
「にしても瑠花が“仕事”で高校に行ってたなんてな」
誠也がぼそりと呟いた。
「しかも相手は高2だっていうから驚きだよな」
その呟きを聞いた貴文が、誠也の顔を見ずに呟く。
「学園長も何考えてんだかなぁ」
端から見ると会話が成り立っているのかいないのかよく分からないが、双方とも会話をしているという意識はある。
作品名:聖霊学園 作家名:秀介。