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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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Light And Darkness

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 苔のようないろに滑る鱗に覆われたからだが、軋みながら鎌首を擡げた。濁った爬虫類の瞳は真紅で、ぬめりをおびてぎょろりと悠弥を捕らえる。
 悠弥の人に言えない厄介な秘密とは――こういったモノと関わりをもたなくてはならないということだった。事情は激しく複雑で、誰にも明かせるわけが……ない。
「隠形……か」
 悠弥は異形を視界に捕らえながら笑い出しもせず、卒倒もせず、静かにそう問うた。
 隠形、とは人の目に見えぬよう、姿を隠す術のことである。みずちは、その術で姿を隠し、ここへ――悠弥の前へ、顕れたのだった。 悠弥はその現実の産物とは思えぬ異形に対し、微塵も怯まず対峙する。
「よくきたね。……のこのこと」
 皮肉げに。みずちはそして悟った。罠だ。こいつは、中学生のなりをしているが狡猾にも己をここへおびき寄せたのだ……始末するために! この現代に、そのようなことのできる者は。
 ――キ……サマ……! 『御師』カ……ッ!
「いかにも。人界豊葦原を惑わす禍つ異形。高天原の帝にかわって折伏成敗させてもらうよ」
 ――ウ……ウォノレェェ……!
 鎌首が大きくのたうって、がば、と開いたあぎとの鋭い牙の隙間から酸の唾液が飛び散った。
「……異形。……いずれの手のものか?」
――ホザケェ! 貴様ノ知ッタコトカ! 天照ノ犬下僕ナゾニ屈スル義理ナドナイワァァ!
 殺気立ち、コンクリートに重たげなとぐろをめり込ませ、みずちの首が伸び上がった。
 悠弥はひとつ制服の胸襟を開くと、すっと身を沈めた。
 重量を感じさせる震動。校舎はもつか?
「無駄なこと。禍物ふぜいが……我ら『御師』にかなうと思ってか! 愚かだな!」
 ――ウルァアアーッ!
 鎌首がぶうんと空を薙ぎ、悠弥目がけて凶暴なあぎとが落ちてくる。
「――『オンカラテイ・バウンキリク。神法九字霊縛!』」
 ――……ガ……ァッ。
 みずちの動きが止まった。見えない、何か――不可視の力に縛られたのだ。悠弥がいま、口にのぼらせた言霊が、その力をもっていた。禍物の動きを封じる呪いの言葉だ。
 はたしてみずちは、その縛から逃れようともがきはじめるが、悠弥の言霊による呪縛は堅く、破ることはできそうにない。開いたあぎとからぼたぼたと、唾液がこぼれてコンクリートを溶解した。煙が上がる。悠弥はそれを避けて、