Light And Darkness
鏡に真向かうかのような、寒気。
あの日確かに自分は消滅を望んだ。存在を滅することをこそ、心の底から血吐するほど。転生を望まなかった。天帝天照の命がなければ 。
悠弥――久米命はそれでも、長い年月を生きてきた。死にゆく人を幾度もみとり、死を願う人のさまも知っている。人にそうさせるのは、深い悲しみであり慟哭であり、憎悪でもあった。自らを滅ぼさずにはいられないその衝動を、久米命は百年前、知った。
その想像を絶する痛み――。
それを。
彼もまた、知っているのか。
喉の奥から何か言葉を紡ぐ前に、義貴はふと微笑んで、悠弥から視線を外してしまった。
言葉にならなかった声は、喉の奥で潰れて消えてしまった。
義貴に傷跡の意味を訊くことはできなくて。
瞼の奥が、熱くなったような気がした。
作品名:Light And Darkness 作家名:さかきち@万恒河沙