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天女の血

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なにも考えられなくなる。
正樹がイスから立ちあがった。
近づいてくる。
けれども、美鳥はなにも言わずにイスに座ったままでいる。
正樹がすぐそばまできた。
その手が美鳥の顔のほうに伸ばされた。
メガネを外された。
途端に、視界がぼやける。
少しして、メガネをたたむ音、さらにメガネを近くの机に置く音がした。
それを美鳥はただ聞いていた。
正樹の手がふたたび近づいてくる。
今度は、頭のうしろのほうにやられた。
うしろでひとつに束ねている髪に正樹の手が触れたのを感じる。
それから、髪を束ねているゴムがつかまれ、引っ張られる。
癖のない髪からゴムがすっと抵抗なく抜き取られた。
肩を越える長さの黒髪が解き放たれて、顔のまわりに落ちてくる。
その後、髪を束ねていたゴムも近くの机に置かれたようだ。
また、正樹の手が近づいてきた。
指で顎を持ちあげられる。
美鳥はおとなしく、されるがままでいる。
されていることがわかっていても、それについて考えることができないのだ。
もちろん反撥することもない。
頭がぼうっとしている。
正樹は美鳥の顔を鑑定するように見ている。
「へえ」
しばらくして、言った。
「地味だと思ってたけど、やっぱり、顔立ちそのものはいいんだ」
楽しげな声。
「この先、大化けするかもね」
どこか満足そうに、頬に笑みを浮かべた。
メガネを外されてぼんやりとした視界でも、その顔はやはり美しく見える。
その美しい顔が近づいてくる。
顔のすぐそばまで、来た。
それでも美鳥は動かずにいる。
あっという間に、距離が無くなった。
口にやわらかいものが押しあてられたのを感じる。
唇を重ねられたのだ。
それを認識していて、美鳥は正樹のすることをただ受け止める。
僕のものになりなさい。
その命令だけが頭にあった。
唇から正樹のそれの感触が無くなった。
至近距離で美声がたずねる。
「もしかして、初めて?」
さっきの行為は。
つまり、キスをしたのはということだろう。
なにも考えない頭でも、それはわかった。
聞かれたとおりだ。
初めて、だった。
美鳥は素直にうなずいた。
作品名:天女の血 作家名:hujio