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天女の血

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名称に平和と入っているのはふざけていると、十兵衛は思う。
おおざっぱに言えば、彼らは武器を作って販売する闇の武器商人だ。
特徴は、名称にあるとおり、高度な武器を開発するのに力を入れている点である。
開発に携わるのは、ノーベル賞を受賞することより自分の研究を極めることを選ぶような研究者。
非常に優秀な彼らが闇の世界にあえて身を置くのは、法に束縛されずに、思う存分、研究がしたいからだ。
また、武器を開発する研究者だけではなく、高度なセキュリティを破って情報を盗み出すクラッカーも組織に所属している。
もちろん、研究者の開発した武器、あるいはクラッカーがハッキングで得た情報を売る者たちもいる。
その収益の一部が、一部とはいえ莫大な金額が、研究につぎ込まれる。
それに、組織を護ることを担当する者たちもいる。
ガードマンというより傭兵といった感じの強さであるらしい。
十兵衛は都築探偵事務所に調査員という名目で雇用されているものの、実態は戦闘要員で、戦う相手がコウヘイキとつながっていることが何度かあった。
しかし、コウヘイキの者と戦ったことはない。
都築がそうなることを避けているのだ。
ヤバすぎる、から。
「だが、なんだってアイツらは吸血鬼事件の犯人を捜してるんだ?」
「さあねえ。理由は話さなかったよ」
彼らは理由を話さず、そして、都築は聞き出さなかったのだ。
できるだけ彼らに関わりたくないからだろう。
「まあ、考えられるとしたら、被害者の中にコウヘイキの関係者がいて、報復するつもりとか」
都築はのんびりした口調で言う。
「情で動いているんじゃなくて、見せしめのために」
「ああ、それはありえるな」
「それから、吸血鬼を捕まえて、研究材料にするつもりとか」
穏やかな表情で都築は物騒な話をする。
「実際に血を吸うのか知らないけど、もしそうなら、なにか特殊な能力があるなら、研究したいだろうし」
「研究してどうするんだ?」
「人間兵器を開発する、とか」
胸くそが悪くなる。
研究材料。
たしかに、あの男には特殊な能力がある。
研究したくなるだろう。
五人の女性を犯して殺したあの男には同情しない。
だが、美鳥の姿が十兵衛の頭をよぎった。
もしも彼らが天女の子孫である春日家のことを知ったら。
喜寿になっても二十歳そこそこの姿の者もいたと知ったら。
不老の研究材料にしたくなるのではないか。
美鳥を。
捕らえようとするかもしれない。
冗談じゃねえ。
そう十兵衛は強く思った。
作品名:天女の血 作家名:hujio