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天女の血

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自分を作りかえたヤツらだ。
ヤツらに出会うまえ、自分はギャンブルにはまり、負けて借金をして、その借金を返すために別のところからまた借金をして、どんどん借金がふくれあがり、そのうち真っ当なところはどこも金を貸してくれなくなり、ヤバいところからも借りるようになり、にっちもさっちもいかなくなって、すべてを捨てて逃げた。
逃げた先で働き口を見つけられず、ホームレスになった。
自分の人生はもうどうしようもない。
どうにでもなれ。
そう思っていたから、いい仕事があるなどと持ちかけてきたうさんくさいヤツに付いていった。
行ってみてわかったのは、この世には自分の予想をはるかに上まわる闇があるということだ。
アイツらから逃げることができたのは幸運だった。
しかし、アイツらに追われる怖さが常にある。
同じ場所に長くとどまっていてはいけない。
アイツらに追いつかれる。
移動しなければ、と頭は告げる。
けれども。
あの娘のことを思い出した。
「ちっとも俺の好みじゃない」
あんな堅そうな女。
だが、忘れられない。
身体を作りかえられてから、嗅覚も変わったのか、体内を流れる血のにおいも感じるようになった。
あの娘からは甘いにおいがした。
きっと、あの娘の血はうまいのだろう。
あの身体はいいのだろう。
忘れられないのは、恋だからではない。
娘の心なぞ、どうでもいい。
身体がほしいだけだ。
男の頬に笑みが浮かぶ。
想像していた。
娘を手に入れたときのことを。
また、うっとりと酔ったような気分になった。
あの身体をむさぼりつくす。
そう決めた。

十兵衛は階段をのぼっていた。
二階はすぎたので、もうすぐ目的地である三階に着く。
足取りは軽い。
階段を三階分のぼるぐらい元から平気なのだが、今は腹がふくれているので特に身体に活力がある。
うまかったな。
市川家で出された夕食を思い出して、そう思う。
作った美鳥は十兵衛と建吾の食べっぷりを見て顔色をかすかに変えていた。
圭に忠告されていたものの、ここまで食べるとは思っていなかったのだろう。
十兵衛は少し笑った。
おもしれえな。
美鳥の姿を頭に思い浮かべ、そう感じた。
作品名:天女の血 作家名:hujio