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天女の血

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弱かったといっても、今と比べればであって、人並み以下であったわけではない。
ケンカもした。
ただし、仲間と一緒のときに。
ひとりのときは勝てる自信がなくてケンカは避けた。
仲間と一緒のときであっても、相手側のほうが強くて、さっきとは真逆で叩きのめされたこともある。
自分は強くない。
それを、よくわかっていた。
あの頃に、もし、今日あの娘を護ったあの男に会っていたら、自分は避けるか媚びるかしていただろう。
圧倒的な強さを感じた。
自分には勝てない相手だと思った。
絶対的強者。
そんな言葉が頭に浮かぶ。
あの男の、自分よりも確実に若い男の、印象だ。
そういえば、あの男は顔も良かった。
人目をひく端正な顔。
なにもしなくても、女のほうから寄ってくるだろう。
生まれつき、恵まれている。
自分とは違う。
腹がたつ。
「俺は、強い」
胸の中にわいて渦巻く重い気持ちを吐き出すように、ぼそっと小声で言う。
「俺のほうが強い」
今度、あの男に会ったら、あの整った顔を殴ってやる。
そう決めた。
思いっきり殴って、何度も殴って、鼻血が出るまで顔が変形するまで殴ってやる。
さらに、土下座させて、謝罪させてやる。
想像すると、うっとりと酔ったような愉快な気分になった。
だが。
今度、はあるのだろうか。
ここにとどまっていても大丈夫なのだろうか。
アイツらに追いつかれるのではないか。
不安が酔いをさます。
自分は追われている。
警察から。
そして、アイツらから。
作品名:天女の血 作家名:hujio