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天女の血

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「たぶん、三度目があるだろう」
圭がやや低い落ち着いた声で告げた。
三度目。
一度目は十兵衛、二度目は建吾のせいで、失敗した。
しかし、またやってくる、三度目があるということ。
その圭の予想は当たるだろう。
そう思ったのは美鳥だけではないらしく、十兵衛も建吾も否定する声をあげずに黙っている。
圭は美鳥から視線をはずして、違うほうを見た。
「俺は会ったことがないからよくわからないが、建吾、おまえは対決した。実際にその眼で見て、相手をどう思った?」
そう問われ、建吾はわずかに首をかしげた。
思い出して考えている表情。
一瞬の間があってから、建吾の口が開かれる。
「勝てない相手ではない、と感じました。変化したときはさすがに驚きましたが、怖いとはあまり思いませんでした」
美鳥は眼を見張った。
びっくりしていた。
あの男が鬼の姿に変化したとき、建吾に驚いた様子はなかった。まったく揺るがず、強気の姿勢を崩さなかった。
実は驚いていて、だが、その驚きを完全に隠してしまっていたのだ。
それに、あの姿を見てもあまり怖いと思わなかった、なんて。
建吾は続ける。
「あの男の力の強さがどれぐらいのものなのかわかりません。俺とは圧倒的な差があるのかもしれません。でも、勝てないとは感じなかった。戦い方を知らない、そんなふうに感じました」
「ああ、それは俺も思った」
十兵衛が同意する。
「アイツは変化してから力が強くなったし、動くスピードも速くなった。人間離れしてるって感じだ。だが、それだけの力や速さがあれば、ケンカの相手を病院送りにしたり、まあ、あの世にってことになってもおかしくないのに、俺は今ここでこうしてる」
昨日の夕方にあの男と戦ったが、深傷を負わなかった。
翌日である今、不利な状況で戦ったのが嘘のように元気な様子でいる。
「ケンカしたことねーって感じじゃなかったが、慣れてる感じでもなかった」
十兵衛は正面に座っている建吾を鋭く見て、さらに、隣に座っている圭を見る。
「アンタたちはアイツと対照的だ。まえに立ってるだけでも、アンタたちが強いのを感じる。身体を鍛えているし、その拳の使い方をよく知ってるのが、わかる。隙がねえ」
その声には、おもしろがっているような響きがあった。
強い相手。
だからこそ、血がわきたつのだろう。
それは十兵衛本人も強いからこそ。
「だが、アイツはそうじゃなかった。なんてゆーかな。隙はあるし、せっかくの力とスピードを活かしきれてねェんだよ」
「ある日、突然、力を与えられたような感じでしょう」
すっと建吾が言い添えた。
建吾は圭のほうに視線を動かした。
「あの男は鬼の一族の突然変異でしょうか?」
「そう問うのは、おまえはそう思わないということか」
「俺の受けた印象では、そうです」
作品名:天女の血 作家名:hujio