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天女の血

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だが、隣で建吾が戸惑っている。
それに気づいて、美鳥は説明し直すことにした。建吾の眼を見る。
「このひとが、昨日、私を助けてくれたの」
「ああ」
なるほど、といった感じに建吾は声をあげた。
その視線の先が美鳥から十兵衛のほうに移動する。
「あなたが」
「あなたなんて言われるほどの者じゃねーよ」
十兵衛は眼をそらし、素っ気なく告げた。決まり悪そうな表情をしている。
どうやら持ちあげられるのが苦手な照れ屋であるらしいと、美鳥は見て取った。
それはともかくとして、と思う。
「さっき、また、あの男が私のまえにあらわれた」
話をしていて思い出したことを、そのまま口にする。
「私の血がほしいって言ってた」
あのときに感じた寒気が肌によみがえる。
時間はすぎて、今は大丈夫だが、やはり、怖い。
十兵衛の顔つきが厳しいものに変わった。
さらに、圭がイスから立ちあがり、近づいてくる。その表情も深刻だ。
「それで、どうなった。建吾が相手を倒したのか?」
「倒してはいません」
圭の問いに建吾が答える。
「他にひとが来たので、あの男は去っていきました」
「でも、宮本さんがいたから私は無事だったんです。宮本さんが私を護ってくれたから、あの男は襲ってこなかったんです」
たいしたことはしていない。
そんなことは、絶対に、ない。
美鳥はそう強く思い、圭に訴えるように言った。
すると、圭は眼を細めた。
「詳しく話を聞きたい」
「俺もだ」
十兵衛が同意した。
そのあと、立ち話をするのではなく、イスに座ってじっくり話をすることになった。
圭の隣に十兵衛が座り、圭の向かいに座った美鳥の隣に建吾が座った。
話を始める。
駅から家までの帰り道、あの男があらわれて、去っていくまで。
話のほとんどは建吾がした。
無駄のない的確な説明だった。
「……つまり、建吾が退けたということだな」
圭が感想を口にする。
その眼は建吾のほうに向けられている。
「おまえらしい賢い戦い方だ」
作品名:天女の血 作家名:hujio