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天女の血

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「行きましょう」
丁寧だが強い調子で告げた。
そして、歩きだす。
美鳥は慌てる。
さっき言われたことはどういうことなのかわからないままだ。
霞がかかったようなすっきりしない気分。
だが、建吾は話をやめて一歩先に行ってしまった。
呼び止めて問いただすのも、妙だ。
それに、早く家に帰ったほうがいい。
美鳥はそう判断して、足早に建吾のあとを追い、すぐにその隣に並んだ。

自宅の近くまで来た。
車庫が見えて、あれ、と美鳥は思う。
明良は車に乗らないので昨日まで車庫は物置と化していたのだが、今、車とバイクがそれぞれ一台ずつ停められている。
車は圭のものだ。
朝、それに乗ってやってきた。
しかし、バイクのほうは見覚えがない。
美鳥にはいかつく感じられるほどの大型バイクである。
だれのものだろうと、内心、首をかしげながら、美鳥は家の中に入った。
玄関の三和土には、圭の靴と、男物のスニーカー。
明良は仕事で、まだ帰宅する時刻ではない。
家の中には男の客がふたりいるようだ。
明良はかなり圭を信頼しているらしく合鍵を渡したので、圭がスニーカーの持ち主を家に入れたのだろう。
そのスニーカーの持ち主があのバイクの持ち主でもあるのだろう。
美鳥は建吾とともに居間に行った。
「ただいま」
「ただいま帰りました」
あいさつをして、部屋に入る。
「おかえり」
イスに座っている圭が顔を向け、穏やかに微笑んで応えた。
さらに。
「おー、おかえり」
圭の向かいに座っている男も言った。
栗色の髪、派手なアロハシャツ。
十兵衛だ。
「……だれですか?」
隣で、建吾が控えめな声で聞いてきた。
作品名:天女の血 作家名:hujio