小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

天女の血

INDEX|5ページ/146ページ|

次のページ前のページ
 

距離が縮まる。
それを嫌うように、美鳥を捕らえている男が動く。
美鳥の口はふさがれたままだ。
どうすればいい。
どうすれば、この状況から逃げられる?
まるで人形のように扱われながら、美鳥は考える。
ふと。
視界が大きく揺れた。
アロハシャツの男が襲いかかってきたのだ。
美鳥を捕らえている男はそれをかわしたが、あまり余裕がなかったらしくバランスを崩した。
そのせいで、美鳥は身体に衝撃を感じた。
アロハシャツの男は、間を置かず、攻めてくる。
速く、鋭い、動き。
ケンカ慣れしているのだろう。
対峙している男も強いのだろうが、美鳥を捕らえているぶん、不利だ。
やがて、ついに、アロハシャツの男の拳が、美鳥を捕らえている男の顔に命中する。
美鳥の視界が大きく激しく揺れる。
身体から男の手が離れた。
放りだされる。
美鳥は地面に膝をつき、さらに手をついた。
眼のまえの至近距離に地面がある。
「クソッ……!」
男の声が聞こえてきた。
さっきまで美鳥を捕らえていた男の声だ。
美鳥は顔をあげ、声のほうを見る。
男はアロハシャツの男から少し離れた場所に立っていた。
殴り飛ばされたが、倒れはしなかったようだ。
その顔からサングラスが無くなっている。
殴られたときにはずれたらしい。
アロハシャツの男はまた距離を詰める。
さらに攻撃するつもりなのだろう。
そのまえで。
「うああああああ」
男がほえた。
その肩が上がっている。
形相が変わる。
美鳥は息をのんだ。
アロハシャツの男も動きを止めている。
それぐらい、男の変化は異様だった。
さっきまでサングラスで隠されていた眼は、ほんの少しまえまでは黒かった。
それが今、赤く光っている。
ありえない。
しかし、それだけではない。
頭に、二本、角のようなものが伸びている。
そして、ほえている口、そこに鋭く尖った長い牙があるのが見えた。
作品名:天女の血 作家名:hujio