天女の血
「学年はひとつ上、か」
乃絵がつぶやいた。
その直後。
「ん?」
なにか気になったように眉根を寄せた。
そして。
「じゃあ、今日は学校があるはずだ、じゃなくて、ですよね?」
そう問いかけた。
建吾はまったく動じない。
「在学中の高校は退学して、志貴川高校に転入する予定です。家の事情で」
その家の事情というのは、実は、美鳥を護るためである。
引っ越しに、退学に、転入。
春日家の血筋の者を護るためなら、そこまでするものなのか、四守護家の者は。
護ってもらう立場としてはありがたいのだが、ついていけないものも感じる。
「うちの高校に来るんだ」
乃絵が眼を丸くする。
「でも、家の事情ならしかたないかもしれないけど、高三って、受験とか就活とかがある時期じゃないですか」
「そうですね。今のところ、大学受験予定ですが」
「それなら、勉強に集中しないと」
「いや、模試の結果が良かったから、問題ないでしょう」
「油断しないほうがいいんじゃないですか?」
「志望校の欄には有名な大学の名前を適当に書きましたが、結果はいつも、どの大学も合格圏内という判定なので」
さらっと建吾は言った。
なかなかすごい話だ。
「ちなみに、在学中の高校は……?」
乃絵が聞いた。
すると。
「星戴学園です」
「セイタイって、星をいただくって書く?」
「はい」
建吾は隣の県にある私立校の名を口にした。
星戴学園。
全国でトップクラスの男子校だ。
志貴川高校も進学校ではあるが、レベルが違う。
美鳥から見れば雲の上のような存在である。