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天女の血

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「……とりあえず、歩きながら話しませんか」
建吾がそう提案した。
ハッとする。
さっきからずっと校門の近くで立ち話をしていた。
まわりの生徒たちの視線を集めながら、だ。
建吾の端正な顔と長身のせいである。
明日、登校してから、あのひとはだれ、とか、どういう関係なのか、と聞かれそうだ。
私は天女の子孫で、あのひとはその天女の子孫の家を護る家のひと。
そんなこと、言えるわけがない。
美鳥たちは歩き始めた。
動いていても、まわりからの視線を感じる。
「俺の伯父と、美鳥さんのお父さんが、幼なじみなんです」
歩きながら、建吾は落ち着いた様子で話す。
周囲の視線があまり気にならないようだ。
見られ慣れているのだろう。
「伯父は様々な武芸を習得しているので、美鳥さんの身を護るために、美鳥さんのお父さんが伯父を頼ったそうです」
実際は圭のほうが押しかけてきたのだが。
「俺も武芸の心得があるし、それに、これから家の事情で伯父の家に厄介になるので、伯父の手伝いをすることになりました」
伯父の家に厄介になる。
つまり、圭と一緒に暮らすということ。
圭は近々、美鳥と明良の住む家の近くに越してくるらしい。
そこで、ということだろう。
「ふーん」
乃絵は浮かない表情だ。
「美鳥のことを護ってくれるのはありがたいけど、なんか、すっきりしないなぁ」
それは隠していることがあるから。
と思ったが、美鳥は黙っている。
「歳、いくつか聞いていいですか?」
いきなり乃絵が話題を変えた。
戸惑うことなく、建吾は答える。
「十七歳です」
「えっ!?」
美鳥と乃絵はほとんど同時に声をあげた。
十七歳。
ということは。
「私と同い年?」
老け顔というほどではないのだが、雰囲気が落ち着いているので、二十歳は越えているだろうと思っていた。
「そうですね。でも、俺は八月生まれで、まだ誕生日が来ていないだけなので、高三です」
作品名:天女の血 作家名:hujio