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天女の血

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そのぶん、律子が不慮の事故で亡くなったとき、明良はひどく落ちこんだ。
葬儀中に泣き崩れもした。
美鳥にとって律子は母であり、母親が死んでしまったことにショックを受け、もちろん悲しかったが、父が心配で手を差しのべて抱きついた。
たしか、あの日は雨が降っていた。
そんなことまで思い出した。
「……話をもどすか」
十兵衛の声に、現実に引きもどされる。
「それで、その年齢よりもずっと若く見えるのは天女の子孫だからか?」
そう問われて、明良の顔が一気に強張る。
十兵衛から眼をそらした。
その眼は暗い。
口は開かれない。
問いに答えようとしない。
答えたくないと思っているのが、わかる。
「……明良の父が現在の春日家の当主だが」
代わりのように、圭が話し始める。
「その母で、明良にとっては祖母にあたる方を、時子様という。時子様は天女の血に目覚めていた」
圭の隣で、明良の口が強く引き結ばれた。
「時子様と比べれば、明良はゆっくりとだがちゃんと歳をとっていると言える」
それにはかまわず、圭は続ける。
「俺の記憶にある時子様は、すべて、二十歳ぐらいにしか見えない姿だ。お亡くなりになられたのは、ちょうど喜寿を迎えられた年だったが、棺におさめられたときのお姿も、やはり、二十歳そこそこにしか見えなかった」
「喜寿ってことは、七十七歳か。それで二十歳そこそこの姿って」
十兵衛は口ごもった。
だが、すぐにその口がまた開かれる。
「すげえな」
あいまいな表現だ。
口ごもるまえは違うことを言うつもりだったのだろう。
七十七歳で二十歳ぐらいの外見。
巷には、いつまでも若々しくとうたう化粧品やサプリメントなどがたくさんある。
まだ高校生の美鳥でも、若くありたいと思う。
不老は多くの者にとっての憧れではないだろうか。
だが。
それが、もし現実にあったら、どうだろうか。
いつまでも若い姿のまま。
七十代後半なのに、二十歳ぐらいにしか見えない。
異様、だろう。
作品名:天女の血 作家名:hujio