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天女の血

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天女の子孫。
はっきりとそう聞こえたが、美鳥は耳を疑ってしまった。
圭の顔を眺める。
もちろん冗談ではなさそうだ。
「……その」
どう返事したらいい。
悩み、結局、心のままを言う。
「やっぱり、信じられない」
天女、なんて。
実在するのかどうか、いや、実在するのかもしれないが、その子孫が明良なら自分もその子孫ということになり、それについては、やはり信じられない。
ありえないと思う。
「それってさ」
ふいに十兵衛が話に加わってきた。
「天女が地上におりてきて湖で水浴びしてるときに、それを見た漁師が天女の羽衣を隠しちまって、天女は天に帰れなくなって、漁師と夫婦になるって話か?」
「だいたいはそんなところだ」
「でも、あの話、たしか、天女は漁師とのあいだにできた子供から羽衣の隠し場所を聞いて、結局、子供をつれて天に帰っちまうんじゃなかったか?」
「天女伝説については各地にあって、その話もいろいろだ。子供は地上に残されて、その子はのちの菅原道真だという話もある」
「それで、春日家の場合は?」
「天女は天に帰らなかった」
「なるほどねえ」
十兵衛はなにかを考えているような顔つきになる。
そして。
「春日家って、漁師の家じゃなくて、昔は庄屋だったんだろ?」
そう聞いた。
「ああ」
圭はうなずいた。
「それなら、別に信じられない話じゃねーな」
あっさりと十兵衛は言った。
作品名:天女の血 作家名:hujio