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天女の血

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つい声が厳しくなった。
美鳥の外見は堅い印象があるので、相手にはキツく聞こえてしまうことがある。
けれども、圭はそれが気にならなかったようだ。
表情を変えずに、その眼を十兵衛のほうに向ける。
「これから先は身内の話になる」
「俺は邪魔だってか?」
十兵衛は圭の視線を受け止め、見返す。
「だが、ヤツにつながることを知ってるってのなら、俺は帰らねえ」
その眼差しには、強い意志。
一歩も退くつもりがないのが、わかる。
圭は肩をすくめた。
「しかし、身内でもなければ信じられないような話だ」
「俺が、いや、俺たちが見たヤツの姿の話も、実際に見てない者からすりゃ信じられねェ話だろうさ」
十兵衛は軽く鼻で笑う。
「なにしろ、ヤツの眼は赤くて、頭には角が二本生えていて、口からは獣みたいな牙が伸びてたんだからな」
すると、圭は眼を細めた。
その近くで、明良が顔を強張らせている。
「なんか心あたりありそうだよな?」
そう十兵衛は問いかけた。
しかし、圭も明良も答えない。
その沈黙は肯定しているように感じられた。
美鳥は口を開く。
「説明してください」
知りたい。
話してほしい。
そんな思いが胸の中で激しく揺れる。
「お願い」
黙っているふたりに訴えた。
少しして。
「わかった」
落ち着いた声で圭が答えた。
そして、明良に視線を投げかける。
「それでいいな、明良」
明良は身体のまえで腕を組み、口を閉ざしている。
だが。
「……しょうがない」
ぽつりと、重い表情で同意した。

話を始めるまえに、まず十兵衛の傷の手当てをすることになった。
その担当は圭が買って出た。
こうしたことに慣れているらしく、手際が良い。
作品名:天女の血 作家名:hujio