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天女の血

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けれども、奥野の申し出を受けていいものか。
竹沢の頭領として正樹は思案する。
「仇を討つつもりなのだろう?」
そう結依が聞いてきた。
仇。
従兄弟である祐二の、仇。
胸の中で炎が生まれて揺らめいたが、正樹は静かに結依を見た。
結依は無表情のまま見返してくる。
「竹沢の。二年まえに、おそらく全部ではないだろうが、その力を見た。同じ頭領ながら、圧倒されたわ」
「……奥野の力が情報収集に向いているのに対して、竹沢の力は攻撃向きだからだよ」
「それでも、あれは、すさまじかった」
他の鬼の一族の頭領である結依さえも驚くほどの力。
だが、それは正樹の身体に跳ね返りもした。
そのことを、寝こんだことを、結依には知らせてはいないが。
「あの力をまた使うつもりなのだろう?」
「必要であれば」
「では、必要でなければ使わないと?」
結依は問いかけてきた。
そして、軽く笑った。
だが、その長い睫毛に縁取られた大きな眼は笑っていない。
射抜くような鋭さだ。
「そうではないだろう。仇を討つ。身内を殺された怒りをぶつけるつもりなのだろう。だが、暴走されては困る。あの組織は大きく、権力と結びついてもいる。暴走したところで、つぶせるのは一部だ。そして、残りが、すべての鬼を敵と見なして行動するようになったら、厄介だ」
「それぐらいわかっているさ」
できることなら、あの組織をすべて解体してしまいたい。
しかし、そんなことはできそうもない。
できないのなら、自分にとっての勝敗ラインを変更するしかない。
なにをもって勝ちとするか。
そして、そのためにはどうすればいいのか。
それを冷静に考えなければならない。
感情のみで動くわけにはいかないのだ。
「わかっている、か。だが、実際にはどうなのか、見させてもらおう」
もしも正樹が激情に押し流されて暴走し始めることがあれば、奥野は止めるということか。
止められるものか。
そう正樹は思った。
だが、それを顔には出さないようにする。
「こちらとしては、奥野の情報力の支援を受けることは、ありがたい。でも、本当にそれでいいの?」
「ここに来るまえに一族の主立った者たちと話し合い、九割方、決まったことだ」
「あとの一割は?」
「私がここに来て、決めることだ」
つまり、最終的な判断は頭領の結依にゆだねられたということだろう。
「それで決めたわけだ」
「ああ」
結依はうなずく。
「僕が甘いから?」
「我らを裏切らないだろう」
ふと。
結依は眼を細めた。
わずかにその堅い表情がゆるむ。
「竹沢の」
紅唇が呼びかけてくる。
「この私にちょっかいを出してくるのは、奥野の者以外では、おまえぐらいだ。それは、私が憐れだからか?」
作品名:天女の血 作家名:hujio