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天女の血

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美鳥は玄関の扉を開ける。
「ただいま」
軽く言って、家の中に入った。
十兵衛もついてきた。
扉を閉める。
そして、玄関の三和土を見て、そこに見覚えのない靴があるのに気づく。
男物の大きな革靴だ。
来客らしい。
父からそんな話は聞いてなかったので、予定外に来た客なのだろうか。
とりあえず、家の中が騒がしくならないよう気をつけることにする。
父のお客様に良いお嬢さんだと思われたい。
美鳥は十兵衛を先導する形で家の中を進む。
ふいに。
「帰れって言ってるだろ……!」
居間のほうから父の声が聞こえてきた。
男にしては少し高めの声だ。
こんなふうに声を荒げるなんて、めずらしい。
「アキラ!」
父ではない男の大声が聞こえてきた。
アキラは明良、父の名前である。
「俺は帰らん。おまえを護る」
「護ってくれなくていい! 俺のことは放っておいてくれ!」
「放っておけるわけがないだろう!」
父とだれかは言い争っている。
かなり感情的になっているようだ。
「俺にとっておまえはなによりも大切な存在だ。おまえが出て行ってから、俺がどれほどつらかったかわかるか!? これまでだって、本当はずっと、おまえの元に行きたかった。だが、おまえの気持ちを考えて、来なかっただけだ!」
それにしても、この内容はなんだろうか。
「……なァ」
隣にいる十兵衛が小声で話しかけてきた。
「男同士が痴話ゲンカしてるよーな気がするんだが、気のせいか?」
「気のせいじゃないと思う……」
しかも、片方は自分の父親だ。
たしかに、中性的で、綺麗な容姿をしていると思うし、実年齢より十歳ぐらい若く見えるひとである。
でも、それにしたって。
自分の父、なのだが。
暗い気分で、美鳥は居間に足を踏み入れる。
作品名:天女の血 作家名:hujio