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天女の血

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ただし、竹沢には欠点がある。
鬼としての力を使えば、それが自分の身に跳ね返り、消耗する。自らの命を縮めることになる。
そのため竹沢一族はあまり好戦的ではない。
けれども、それは場合による。
戦うべきだと判断した場合、命を削ることも辞さずに戦う。
「だが」
結依が眼を細めた。
「市川美鳥を連れてきてはいないようだな」
話がもとにもどっている。
正樹はふっと表情をゆるめた。
「ああ、フラれてしまったんだ」
軽い調子で答えた。
詳しく話すつもりはない。特に美鳥の能力については身内にすら知らせないでいるのだから。
「そうか」
結依は追求してこず、硬質な声で相づちを打った。
そして、立ちあがる。
帰るらしい。
もう用は済んだということだろうが、その用とは美鳥に会いに行った目的を聞くことであったらしい。
奥野の頭領がわざわざ竹沢の本拠地まで来てなにをするつもりなのかと多少は身構えていたので、やや拍子抜けだ。
見送ろうと正樹も席を立つ。
畳を進み、桟の手前で結依の横に並んだ。
ふと。
結依は歩く足を止めた。
だから、正樹も立ち止まった。
結依の横顔を見る。
整った、人形のような顔。
その顔が正樹に向けられる。
無表情のままだ。
「竹沢の」
紅唇が開き、呼びかけてきた。
長い睫毛に縁取られた眼がじっと見ている。
「おまえはたしかに最強だ」
称賛とも受け取れる台詞。
結依は続ける。
「だが、甘いな」
白い陶器のような頬が、ふっとゆるむ。
笑みが浮かぶ。
からかうような笑み。
「市川美鳥に断られようが、連れてくることはできたはずだ。豊原宜也のように相手をさらうこともできだだろうに」
美鳥を自分のものにしようとして、けれども途中でやめた。
それを思い出した。
結依は知らないはずだが、見透かされたような気がした。
甘いと言われてもしかたのないこと。
正樹はとっさに返す言葉が思いつかなかった。
作品名:天女の血 作家名:hujio