天女の血
案の定。
「なんだとコラァ!」
「ふざけんじゃねェ!」
七人は顔を歪め、怒鳴った。
愚かだと、建吾は感じる。挑発されて、それに引っかかる愚かさ。頭に血がのぼった状態では、ますます不利になるというのに。
平然としている建吾に、男たちは凶暴な気を放ちながら襲いかかってくる。
建吾を捕らえようと、何本も手が伸びてくる。
もちろん、建吾には捕まるつもりはない。
動く。
頭脳は瞬時に的確な判断をして、身体はそれを即座に実行する。
攻撃をかわし、あるいは、攻撃に攻撃を返す。
建吾の動きにムダはない。
迅速で、確実。
その能力の差が、はっきりとしてくる。
投げ飛ばされた者は、地面に叩きつけられるまで、自分の身になにが起こったのかわかっていなかっただろう。
それぐらい、建吾にしてみれば簡単に、技が綺麗にきまったのだ。
他の者も同じである。
自分の攻撃はあっさりと無効化され、建吾の攻撃は確実にきまる。建吾がどう動くか読めず、いや、読むまえに、もう攻撃されていた。防ぎようがない。
「うがッ……!」
骨を折られて、声をあげている。
また別の者は顔面を強打され、鼻血を流している。
地面に尻もちをついている者もいる。
次第に、七人もわかり始める。
警告されたとおり、自分たちには勝てない、到底かなわない相手だと、理解する。
うっすらと恐れさえ感じ始める。
七人は建吾に向かっていかない。警戒している、いや、おびえている。
そんな七人を、建吾は鋭く見渡した。
建吾の端正な顔に苦しそうな表情は浮かんでいない。
息ひとつ乱れていない。
「なんだ、予想していたよりも弱いな」
冷ややかに告げた。
そして。
「憐れだな」
言い放った。
侮辱である。
「クソッ!」
カッとなったらしい男が吐き捨てた。
おびえが消えている。
ふたたび向かってくる気になったようだ。
七人全員ではないが、何人か、その身体から怒気を漂わせている。
建吾は、内心、笑う。
これを期待していた。
そのために、彼らをあざけったのだ。
徹底的な攻め気性。
それが、戦っているときの建吾を知る者の建吾に対する評である。