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天女の血

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七人が顔に笑みを浮かべたまま、けれども剣呑な雰囲気を漂わせて、近づいてくる。
距離が詰まりすぎるまえに、建吾は彼らから視線を外した。
身体の向きを変え、公園のほうへと歩きだす。
「オイ」
声をかけられたが無視して、建吾は歩道と公園の境界にある車止めポールの横をとおりすぎた。
七人は無理矢理にでも建吾を公園の中につれていくつもりだったのだろう。
しかし、建吾がみずから進んで公園に入っていくので、彼らはやや拍子抜けした様子でついてくる。
公園内には、他に人はいない。
ブランコなどの遊具やベンチが取り残されたようにある。
樹木があちらこちらに植えられていて、薄闇の中、葉を生い茂らせた枝を広げている。
「オイ」
ふたたび、声をかけられた。
「止まれ」
イラだちを含んだ厳しい声で命令した。
建吾は歩く足を止める。
公園の外からは見えないところまで来ていた。
彼らにとって都合の良い場所なのだろう。
だが、ここまで誘導したのは、建吾である。
建吾にとっても、都合の良い場所だ。
悠然と、彼らのほうを向いた。
七人は少し戸惑っているようだ。
建吾がずっと落ち着いているのが理解できないのだろう。
彼らの視線を受け止め、建吾は静かに見返す。
すると、七人はハッとした表情になった。
それから、歩道にいたときのように、ニヤッと笑う。
建吾の落ち着いた態度は予想外のものだが、建吾ひとりに対し自分たちは七人、自分たちのほうが圧倒的に有利。
そう思ったのだろうか。
「アンタ、なんか、えらそうだよな」
「そーゆーの、見てて、スゲェ腹たつんだよ」
余裕たっぷりな様子で、因縁をつけ始めた。
くだらない、と建吾は思った。
彼らは建吾がこの公園の近くまで来たときに歩道に出てきた。
どうせ、公園で建吾が来るのを待っていたのだ。
それなのに偶然を装っている。
ケンカを売る本当の理由が言えないからだろう。
言うなと命じられているのだろう。
彼らをおそらく金で雇った者から。
この七人は、美鳥や十兵衛が話していた組織の者とは違うだろう。
組織の者に雇われた、使い捨てにできる者たちでしかないのだろう。
そんなことは、彼らを見て、すぐにわかった。
「だーかーらァ、俺たちがオマエを教育してやる」
「言っておくが」
しらじらしい芝居を建吾は断ち切った。
「おまえたちでは、俺には勝てない」
七人をまえにして堂々と立ち、圧倒するぐらいの力強さで告げる。
「それに、俺は今、機嫌が悪い」
事実だ。
護りたい大切な相手が傷つけられて、寝こんでいる。
今まで表には出さずにいたが、機嫌はすこぶる悪い。
Good luck.
十兵衛の言葉が頭によみがえった。
しかし。
きっと幸運はない。
彼らは、不運だ。
「ケガをしたくなかったら、立ち去れ」
警告した。
だが、彼らが聞かないことはわかっている。
むしろ、これは挑発だ。
作品名:天女の血 作家名:hujio