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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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【勾玉遊戯】inside

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 級友の橘飛鳥と、柚真人のよき友人を自認する件の常駐弁護士優麻にあっては、動じたふうもない。飛鳥に至っては付き合いも揺籠から始まる程のものだったし、どちらの家も勝手知ったるものだったから、いつものことではあったのだが。
 飛鳥はすっかり据え置きの、曰く『マイ箸』を取り上げながら、にやりと唇を歪めた。
「いやあ、いつもお前ん家、みんな留守で帰ってこないだろう? だからさ、司ちゃんと二人じゃ寂しいだろうなあ、と思って。ねえ、弁護士さん」
「ねえ、橘君」
 前掛姿の少年は、二人の言葉に苦々しく目を細めた。軽く、睨んでみる。
「……」
 飛鳥と優麻の言いたいことが、何となくは理解できる柚真人である。
 こういうところが付き合いの長い相手は厄介だ。優麻と飛鳥は少年神主の歪んだ恋の矛先を知っているから質が悪い。まして飛鳥は、柚真人に対して司奪取を宣言してはばからないときた。このあたりは友人・従兄弟ながら微妙な緊張感の漂う関係といえよう。
 だから柚真人は鼻を鳴らし、憮然とした態度で応える。
「は。ありがたいことだね」
「まあまあ。それに、わざわざよ? お前の趣味にこうしてつきあってやってるんじゃないか。感謝されたっていいよなあ。いいだろ? 食卓囲むのは大勢の方がさ」
 皇柚真人の趣味は料理だ。およそ同年代の少年たちの平均的趣味の範疇からはおそろしくはずれているといっていいだろう。その点を指摘され、少年は憮然として形の良い唇を尖らせた。
「……うるさいな。いいんだぞ別に無理しなくても」
「あ、かわいくないぞう。柚真人君」
「かわいくなくて結構」
「くっすん。司ちゃん、お兄ちゃんがいじめるよう」
「……小さいわね。柚真兄」
 それは司のひとことで、そうなっては――無敵の少年神主も黙らされざるをえなかった。こういう時、三対一では勝ち目無しということを、柚真人は幼い頃からの経験から学んでいたのだ。

      ☆

 蔵に触れれば、災いが起きる。
 祟りがあるから、蔵の扉は開けてはならない。
 三条祐一は、幼い頃からただ意味も無くそう聞いて育った。
 蔵に近づくことは厳しく禁じられていた。いままで、それを別段不審に思ったことはなかった。だが――。
 この真冬に、もう七日も蔵に閉じ込められていて何ともないはずはない。
 ――そうだろう、皇。うちの家族皆おかしいと思わないか?