小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

【勾玉遊戯】inside

INDEX|4ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 

 果たして三条は、飛鳥のことなどかまったふうではなく柚真人に詰め寄り、そして――。


「皇。話があるんだ。ちょっとでいい。お前ん家、神社――やってるんだよな?」

      ☆

 三条少年の話は、実に奇怪なものであった。
「妹が、蔵に入ったまま、出てこないんだ」
 ――陽も傾いてゆく午後四時の教室。 少年は、泣きそうな顔でそう言った。
 そして、こう続けたのである。
 三条の家には、蔵があった。
 古くからの地主で、広い土地を持っているのだ。その蔵に、七日前から、三条祐一の妹の美佳が閉じ込められているという。
 そもそもその蔵はもう何十年も前から――いや、何百年も前から錠前で扉は封印されているのだという。祖父と両親に聞いた言い伝えでは、三条家のその蔵には、『クラヒメ』様なるものが棲んでおり、蔵の扉は開けてはいけないことになっているというのだ。
 開ければ――三条家は『クラヒメ』様の怒りをかう。
 災いが降りかかる。
 さて、事の起こりは七日前の元旦。
 三条家の正月は、とりあえず家族で過ごす決まりだった。今年の元旦も、家族で初詣でに行って、祐一も帰ってきてからは何となくすることもなくてごろごろしながら妹の遊び相手をしていたのだそうだ。
 妹はそれから庭に出て遊ぶといい、祐一が妹を玄関から出した。
 それが、祐一が見た最後の妹の姿だった。
 そして――妹の姿が見えなくなった。 祖父と両親は酒が入って寝てしまい、祐一も自室でテレビゲームに興じていた、その間の出来事だった。
 日が暮れて、夜になっても帰ってこない。そこで不審に思って、家中の者が探したところ、何と  庭の隅にある土蔵錠で封印された蔵の中から、妹の声がしたのだそうだ。
 そこからが三条曰く、おかしい。
 普通に考えれば、安堵して蔵の錠を開け、家族は娘を蔵から出すであろう。
 それがごく当たり前の行動だ。
 しかし――家の者は、誰一人として、蔵の鍵を開けて妹を助け出そうとしなかった。それどころか、蔵には触れるなという。
 祐一の妹は小学三年生。この冬の最中に暖房器具ひとつない古い蔵の中に飲まず食わずでは、そうそうもつとも思えない。否、放置するのは危険であるとさえいえるだろう。
 なのに、誰も妹を蔵から出そうとはしないというのだ。