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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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【勾玉遊戯】inside

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 ただそれだけのことのはずではないか。
 だが、三人はお互いを疑っていないのだ。『クラヒメ』様の仕業だと信じているのだ。 呪いだと。
 祟りだと。
 自分の娘が心配ではないのか――否、それよりも、祟りを恐れるるのか。
 あの頑丈な土蔵錠の鍵の在処がわからない以上、妹をあそこから出してやることだって、祐一には出来はしない。
 不快だった。
 そして不可解だった。
 ――あたしは大丈夫よ、お兄ちゃん……。


 それから、祐一は両親とも祖父とも口をきいていない。顔も合わせていない。
 自分の親が、祖父が、まったく理解できなかったし、信じられなかった。
 両親のしていることは、とても正気の沙汰ではない。警察に通報すべきなのだろうか。
 ――だけど何て?
 監禁?
 虐待?
 けれど美佳が閉じ込められているのではないのだ。出てこないのだ。
 何故美佳がそこにいられるのか。
 何故美佳はそこに閉じ籠ることを望むのか。
 どうしたらいいのか祐一にはわからない。
 ――皇は、どんな答えをくれる?
 彼が神社の神主を勤め、生徒たちの間でちょっとした噂の的になっているのは、祐一も知っていた。心の中で彼を馬鹿にしたこともある。
 いつもすました顔をしている、いけすかない奴だとも、思っていた。
成績がいい、顔がいい、ただそれだけのことで、いつも誰かの話題の中心にいるあの、男が、はっきり言って嫌いでもあった。
 だけど――。
 強い北風が坂道を下り吹き抜けてゆく。
 人間の感情とは都合よくできているものだ。昨日、初めてあの皇柚真人に声をかけたのだが、以外と話し易かった。荒唐無稽な話を馬鹿にすることもなかったし、別に想像していたような、鼻持ちならない奴でもなかった。
 ――美佳……。
 祐一は鞄を抱き抱えるようにしてもう一度坂の上、枯れ木立ちの向こうの空を見遣った。
 目に痛いほど白い雲が、流れて行く。
 ほんの刹那立ち止まって、祐一は、寒々とした蔵の中を思った。

      ☆

「蔵の扉を開けることだ」
 柚真人は、三条にそう言った。
 ――放課後である。
 生徒の影も疎らな昼下がりの教室。三条祐一は自分の座席に座っており、柚真人はその前の座席の椅子に腰をのせ、軽く腕組みをして立っていた。
 飛鳥の席は三条の右隣であるらしく、彼はそこに座っている。