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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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【勾玉遊戯】inside

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 すっ――と柚真人が片手を上げて、優麻の言葉の先を制した。
「優麻の目に映るのが、現実。おれの目にうつるのは、真実。ただ、それだけの違い」
 この少年は、――皇神社の少年神主は、その、見えないものを見る瞳で、何を『霊視た』と云うのだろう。
「ですが……」
「このことは近いうちにおって連絡するよ。たぶん……仕事を増やすと思う、優麻」
 柚真人は、優麻の背中にそんな言葉を投げてよこした。
 少年がその不可思議なものを見るという瞳に、一体何をうつし、いかなる真実を見たというのか  優麻にはわからなかった。否、それが物理的に瞳に像を結ぶ物なのか、それとも彼の心が見るのか、それさえ判然としているわけではない。
 それはいつものことだ。
 けれど、彼の言いたいことは、わかった。
 玄関を出て、皇家の庭を横切り、神社の境内を歩く。先日降った雪が、まだ溶けきれず氷の山になって固まっていた。夜の中に浮き上がっている白い色が、いっそう寒さを感じさせる。
 そう、年明け二度目の雪だ。……この間降ったのは、たしか一月……二日か三日か。
 鳥居をくぐると、道路に出た。
 ――雪の日だってあった。
 蔵に棲むという、家の守り神の、祟りに怯えて幼い娘を放置する。
 そんなことがあるのだろうか。
生贄でもあるまいに、家の娘を
犠牲にしてまで守らなくてはならない……何がある? そんな倫理がこの御時世に通用するのか?
 かの秀麗な少年神主の言うことが、本当ならば。
 確かに、こんな寒さでは、小さな子供は凍えてしまう。
 一晩ともちはしないであろう。
 それは、現実。
 だが。
 それでは真実と現実にいかなる食い違いがあるというのか。
 ――食い違い――錯誤か?
 優麻は、知らず微笑んでいる。
 錯誤。
 現実と真実の錯誤。
 それは――いや、それこそが。
 真実であると。
 多分そうなのだろうと、優麻は思った。