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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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【勾玉遊戯】inside

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「それにしても、なにもかも唐突ですよね。今まで何もなかったのに、突然祟りというのは。……いいですか? 気をつけて下さい。結果と原因が逆転しています、そのお家の方々の話は。今の不可思議な現象こそが祟りなんでしょうか? だとすると原因は何です? それとも今の現象が原因となりうると言うのでしょうか。とすれば、すでに蔵に人の手が触れている以上、祟りは起るのではないでしょうか。不可避に。では一体、彼等は何を恐れて蔵に触れるなと言うのでしょう? いま、現在も。それは本来なら、妹さんが蔵の中に立ち入ってしまったことで祟りによる封印は破られてしまったのではないのですか? それなのにいまだ、蔵に触れてはならない? それは、矛盾です。ちょっと……それも、不自然な印象ですけど……」


「ねえ、柚真人君?」
 柚真人は答えず――ふっと笑った。

      ☆

 その日。
 皇家の玄関で靴を履き終えた優麻は、彼を見送るためたたずんでいた柚真人をふいに振り返った。
 いつもの、おっとりとした笑顔で。
「君には、もう結論が見えているんでしょう?」
 対する少年は、それを聞くと少し顎を反らして微笑んだ。
 応接間の方からは、飛鳥が何やら騒いでいる声が聞こえる。時計は午後十時を回ったが、彼はまだ居座るつもりのようだ。
「なあ優麻。生きている子供を、七日も蔵の中に閉じ込めて置いたら、普通はやっぱり死ぬだろう?」
「……普通は……こんな季節ですから。子供一晩で凍えてしまいます。それは先刻も言いましたが?」
 しかし三条の家においては事情が違う。だから、家族は蔵の扉を開けられない。
 蔵の中から声がするからだ。それは、蔵の中で少女が生きている証しに他ならない。
 ――出たくない。
 ――扉を開けないで。
 明りも点らない、冷たく暗い、黴びた空気の澱む蔵で、何故少女はそれを望むのか。
 何故少女は生きているのか。
 否――。
 優麻は、不意に柚真人の言外の示唆に、気づいた。
「え? ――柚真人君?」
 柚真人は、その恐ろしく美しいかんばせに、仄かな笑みを浮かべて頷く。
 その様は、白装束を纏っていなくとも、やはりどこか神さびて見える。
 この少年は、巫なのだ。
「事実はごく簡単さ。現実には……現実に起こりうることしか起こらない。そうじゃないか?」
「そう、なんですか? ですが……それでは……」