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むべやまかぜを

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 女王セレネ。それから賢者ジゼル。ジゼルはこれは丸山花世の分身。言ってみれば、この人物がキールキャラ。物語を支える役割を担う重要な竜骨の部分。物語の核心とはつかずはなれず。一定の距離を保ちながら作品の進行を見守り、作品が暴走するようなことになれば、これを先回りして制御する。作品全体を押し上げる大黒柱。普通はキールキャラは主人公であることが多いが、今回は主人公とキールのキャラは別。
 「……」
 少女はキーボードを叩き続ける。パソコンの液晶モニタの上には付箋が張ってある。付箋の上にはボールペンで殴り書き。
 
 セレネ女王――いざわ
 女司祭ヨハンナ――やまだ
 騎士見習いの少女ヘンリエッタ――たっつん
 
 さらには『メール済み 十七日十八時』という赤字。全ては物書きヤクザ自身の手になるもの。物語はリィの報告書を経て静に進んでいく。
 
 ――メルツェンの王城近くには古い時代の塔が存在する。何人も触れてはならない神聖なる聖域。中に何があるのか、そのことをすら語ることが許されぬ場所。王女セレネが戴冠し、女王セレネとなって十年。この禁忌の場所を法王庁から送り込まれてきた女司祭ヨハンナの調査団が訪れる。
  
 「……月並みっつっちゃあ月並みな展開だよなあ。でも、まあ、仕方ないか。ほかの連中との兼ね合いもあるし。大事なのはエロいこと」
 丸山花世は、龍川の『作品』ではなくて山田の『ツール』という提案を採用したのだ。女王様は女王様。先輩は先輩。幼馴染は幼馴染……。記号、である。丸山花世はキーボードを叩きながらモニターにつぶやく。
 「ハイミスで職務に忠実なヨハンナちゃん……がんばってちょうだいな」
 それは物書きヤクザのキャラに対する語りかけであり、エール。そして、担当となる山田に対する叱咤。頑張って中高生、さらには大きなお友達を興奮させてちょーだい……。
 
 ――ヨハンナは法王庁の命を受けて聖遺物を探索している。失われて久しい救世主の残り香。だが、それがなんであるのかは法王庁自身も理解していない。まずは各地の調査……。
 
 黒い髪をした色白の美人。お堅い印象の女司祭の姿。そのイメージはすでに丸山花世の中にある……と。
 「あれ……」
作品名:むべやまかぜを 作家名:黄支亮