むべやまかぜを
はっきりさせておくべきだろう。女主人は妹分にこの仕事をできればさせようとしている。そうすることにどれほどの価値があるのかは重荷を押し付けられる丸山花世のほうにははかりかねるのだが……。
「まあ、いいや。とりあえず、そういうことなら」
少女は結局最後は頷いた。アネキ分がそういうのであれば多分そうなのだろう。それに、人を集めるといっても、このような土壇場の修羅場に喜んで飛び込んでくる馬鹿が本当にいるとも思えない。結局は『いろいろと人を探しましたけれど、集まりませんでした。この話は無かったことに』ということになるのではないか。少女はそのようなことを考えている。
――どうせそんなやっつけ仕事、うまくいかないよなー。
うまく行かないのであればほうっておけばよろしい。
「ええと、それだったら僕は社のほうに戻ります……」
「え、これから? オカジーまだ仕事あんの?」
土曜日の十一時過ぎ。岡島はこれから仕事があるのか。いったいペルソナマガジンの就業規則はどうなっているのか。労働基準局は何をやっているのか。少女は気の毒そうな顔をしている。
「ええ、まあ、イラストを待たなきゃ行けないんで。丸山さんのほうには人が集まり次第連絡しますから。ああ、そうだ、連絡先ですけれど」
「アネキのところにメールを送ってくればいいよ。そっから転送してもらうから。電話でもいいよ。アネキの家、私の家のすぐそばだから」
少女は言い、大井一矢は笑って頷いた。
「ああ、じゃ、そういうことで。また連絡します」
岡島はそう言うと取るものも取り合えずといった具合に店を出て行った。後にはWCAの会員が二人。
「本当にうまく行くのかなー。パッチワークのエロ小説なんて聞いたことないんだけど」
「それをうまくやるのが貴女の仕事。そうでしょ?」
丸山花世は腕組みをして小さくうなっただけだった。
成る成らぬも、結局は物語の神様の思し召し、だろう。
そして週が明けての月曜日。
外は再びの雨。
有楽町近くにあるペルソナマガジン社の会議室に丸山花世の姿はあった。
「まさか、本当に集めるとは思わんかったなー」