むべやまかぜを
「うーん……アニメとかゲームと小説って違うと思うんだよなー。っていうか、それこそアネキがいつも言ってる『物語の神様を馬鹿にしている』行為なんじゃないかな? そんなやっつけの仕事は……」
「大事なのはハート。作品をなんとかしようというハート。レーベルをなんとかしようというハート。アダルトライトノベルをなんとかしようというハート。そのハートが間違っていなければ、物語の神様もきっと許してくれるでしょう」
正しいような正しくないような。正論のような正論でないような。
「うーん。なんか、いつもアネキには言いくるめられているだけのような気がするんだけれど……」
少女は不満顔である。だが、岡島のほうはというと……。
「なるほど、分担か」
と、こちらはえらく乗り気であるのだ。
「一人で二ヶ月ならば、二人ならば一月、三人だったら二十日。丸山さんがエロが苦手だというのであれば、丸山さんにはエロに絡まない部分を書いてもらうとか。一冊分は無理でも、少しぐらいならば手伝ってくれるライターさんだったら手配できると思いますし……うん。十分いけますよ!」
「オカジー、あんた、勝手に話すすめないでよ……」
どんどん転がりだしていく話に女子高生だけが渋い顔なのだ。そしていらぬ知恵を授けた女主人が言った。
「ただひとつ、大事なことがある。それは、集めた人の実力をそろえること。能力にばらつきがあると、あとでぴったりと結合させることができないから」
それは寄木細工のような小説。
「でもさ、そんな作品、売れるかな。っていうか、そんな変なキメラみたいな作品、作る意味、あんのかな?」
丸山花世だけが反対をしている。彼女にはこの合体小説が生まれる意味が分からない。全ての作品は運命を持って生まれる。だとすれば、こんな奇妙なつぎはぎのフランケンシュタインの試作品を産み落とすことにどんな意味があるのか。女主人はそこで穏やかな声でこういった。
「花世。人が作品を変える。けれど人もまた作品によって変わるのよ。そして、変わる人は読者だけではない。作者もまた変わっていく」
「つまり、私が変わるってこと? 私は別に変わりたいとも思わないんだけれど」