あなた=?
「誰への謝罪」
その言葉は誰に言ったのか。
「ごめんなさい」
シレーヌはゆっくりとつぶっていた目を開けると自分の足元を見た。岩に座っている自分の足は海水に浸かっていた。
「残り時間は10分のようね」
シレーヌは手の上で懐中時計の蓋を閉めた。
「レグルス」
シレーヌは岩から降り、海の中に立ちながらも浜にいるレグルスを見た。
「……話してくれるんだな」
「もちろん。レグルスに約束は破るなと教えてあげたのは私だからな」
シレーヌは笑みを見せた。
「昔、一人の人魚が地上の王子に恋をした。しかしその恋は実らなかった。人魚は自分が生き残るために王子を殺そうとしたが、人魚はもう王子の事が好きだった。彼が死ぬのは嫌だ。だから自分が死のうと思った。その人魚は泡になって死んだ」
「普通の人と変わらないじゃあないか……」
シレーヌは小さく頷いた。
「私達人魚にだって何かを思う心はある。人間と同じ。ただ姿形が違うだけなんだ」
レグルスは何も言わない。
「そしてここからが重要だ。その人魚が人間になったことはすぐに広まり、何人もの人魚が人間になった。その中に私のお祖母様もいる。でも、誰もが人間になれるわけではないある条件付きでやっとなれる」
「条件……?」
シレーヌは星が輝く空を見ながらも両手を胸の前で重ねた。