あなた=?
「逃げるのは罪ですか?」
人がいない街をシレーヌとレグルスが走っていた。
そんななかシレーヌは青空を見上げた。
「レグルス! そこを右だ!」
前を走っているレグルスにシレーヌが叫んだ。
レグルスは十字路の真ん中で立ち止まった。
「ここを右だ? あっちは……」
「いいから行くぞ」
立ち止まったレグルスをシレーヌはすぐに追い抜くとレグルスもつられるように走り始めた。
シレーヌとレグルスは目の前に広がる光景に足を止めた。
「もう逃げられんぞ!」
兵士の足音と大臣の声にシレーヌとレグルスはゆっくりと振り向いた。
「それともこの、崖から落ちて海に逃げるか?」
「……大臣、聞きたいことがある」
崖の縁の一歩手前に立っているレグルスが大臣を睨んでいるのを横目で見ながらもシレーヌは一歩前に出た。
「お前らの質問に答える奴がいるとでも思ったか?」
シレーヌは笑みを浮かべている大臣の言葉を無視しながらも静かな、そして凛とした声を出した。
「……大臣。お前はどこまで『人魚姫』を知っている?」
大臣の顔は笑みからシレーヌを睨みつく表情に徐々に変わっていった。今度はシレーヌが笑みを浮かべた。
「その反応だけで十分だ……。おい、レグルス」
シレーヌはレグルスの方向に足を向けるとレグルスに近づいた。
「……さっきのお返しだ」
「は?」
レグルスに目の前に立ったシレーヌはゆっくりとレグルスの両肩にシレーヌの両手を近づけた。
「おつりが来るぐらいだ……」
「シレーヌ! きさまぁぁ!」
崖から海に向かって落ちていくレグルスを見ていたが顔を少し横に向けた。
「大臣。『人魚姫』を知っているからと言っていい気になるな……」
シレーヌはそれだけを言うと崖から飛び降りた。
海に二つの水しぶきが上がった。