ジェスカ ラ フィン
が見えた。僕は、「ユンドググ汚水道」を通らなかった。「ユグスの森」の.
方には、「パパロメの砂漠」1帯があった。嘗て、ソフサラコマと、「金融経
済国ヘンザウロ」からバイクで高速道路を通った時に見た、砂漠の海の1部が、
あの、「パパロメの間欠泉」の砂漠の大海1帯から流れていたのだ。各地から
殉教者はぞくぞくと集まり、およそ、10万人はいた。この中からどうやって
大道芸人のソンハを見つけろと言うのだ。持ち物検査は常にチェックされて、
不審な物を持っていれば、すぐに処分されるのだ。人の海があった。縄と足枷
を付け直され、「ユグスの森」を通った。
「この奥には『ペクディウス死体溜まり場』がある。死体を流された者、探し
ている者を探している者。お前達はエクアクスの為に、パパロメの間欠泉の周
りを、来年の2月まで回り続けることになる。『ペクディウス死体溜まり場』
に、用のある者は、我々の1団が、森を過ぎるまでに用事を済ますこと」
狐のダズバグルフ盗賊団の下っ端は言った。その声が聞こえると、突然、ゴ
ゴゴゴ…と、10万の殉教者のほとんどが、後方から許しを頂いたようで、走
って来た。飲み込まれる!! そう思い、僕は無我夢中で.方へ駆けた!!
砂埃が、大津波のように押し寄せて来た。僕は、砂丘に突っ込んで、畳み転ん
で圧死するのを防いだ。ソフサラコマの遺体は、砂まみれになった。ソフサラ
コマの履いた靴下が、寂しく思われた。僕も行列に並んだ。
それから1週間かけて、「ユグスの森」に入った。森の中は、死体の肉の奪
い合いや、「ユンドググ汚水道」の出口から坂を上って行こうとする者、「ユ
ンドググ汚水道」の水を飲む者、「ユンドググ汚水道」と繋がっている「パユ
川」に流れる死体の衣服を奪い取り(それはほとんど麻だった)、動物と人間関
係無く争って、殺し合いをしていた。森の中で新しく死んだ体は、死体の川の
上を流れて、生肉を食いちぎられた。それをダズバグルフ盗賊団の下っ端は見
て笑っていた。夜になると、人肉のカーニバルで、酒を飲んで松明を灯して
「ユグスの森」を抜けた大群の行列を照らし、笑った。
1週間後に「ユグスの森」を出た。まさに地獄絵巻だった。何故か奴隷には
馬鹿にされなかった。僕も「ユンドググ汚水道」の水を飲んだ。汚物を吐いた。
炎天下で、体が焼き焦げるところだった。「ユグスの森」で丸まった爪を噛ん
で切った。途中、奴隷のパピから、
「お前の爪をくれ!! 真水をやるから!! 爪を、くれ!!」
と言われて、爪をやるとするめのようにパクパクと噛み続けた。汚れを、無
い歯で引っ掻いて垢を食べ、腹とストレス解消を満たしているようであった。
僕はもらった水を飲んだ。体は黒いままだった。「バラダラマスの町」で奴隷
達よって描かれた僕の絵を思い出した。僕は歩き続けた。進路を1気に.に変
え、先へ進んだ。夕日が沈む砂漠は綺麗だった。食料は干した蜥蜴などだ。虫
を慕っている狐は可笑しかった。砂丘を登ると、真っ黒な「ソピョーゾギャニ
アンの宇宙」があった。奴隷の1人のスッチョはこう言った。
「宇宙の星々は、命を削りながら流れています。ホメネカが、管理し、命尽き
るのを見ています。『ソピョーゾギャニアンの宇宙』は、『ヘーミッド』の空
気に触れすぎて、『酸化』し、もう垂れ幕として使い物になりません」
「ソピョーゾギャニアンの宇宙」は、まるで暗黒の大陸に見えた。中央付近で、
何か大気中の何かを吸収しているように見えた。星が、末当に、白いオタマジ
ャクシのように蠢いていた。大抵の星は死んでいた。北東に、緑の多い「ナギ
ャゾグビの長城」があった。僕は前を向いた。
「星達が怒っているのです。夜、空に出ているのはあなたを怨んでいる、『ソ
ピョーゾギャニアンの宇宙』に閉じ込められた星の家族の遺族か恋人達です」
スッチョは嫌味ったらしく僕に言った。
「うるさい」
僕は怒りを堪えながら一言だけそう言った。
1週間後に、「ユグスの森」に終わりが見え、「パユ川」が、地下に潜り、
「パパロメの間欠泉」が見えてきた。高い砂柱をドハドバ…と上げて、砂柱が
噴き出していた。中心から、縞のようになっていて、底無し砂漠になっている
ようだった。スッチョは倒れて、後ろに下がった。目の前で処刑されている者
が何名もいた。先頭の殉教者が、既に「パパロメの間欠泉」を1周しているよ
うだった。円周が、500kmぐらいあった。
「3000回廻れ」
ダズバグルフ盗賊団の下っ端は言った。僕も巡礼に参加した。祈りながら、
回り続けるのだ。しかし、4日後ぐらいに、奇蹟が起きた。木の棒っこに、
「エクアクスさん!! エクアクスさん!!」
とぼろ布を付けて群の中から叫ぶ声がした。僕は人込みを分けてその場所ま
で行った。
「おぉ、偉大なるエクアクス様!! 私は、ソンハです!! 旅芸人の者で
す!! この布は貴重なものです!! 此処から.に在る、『ジグラの教会』
に、バイクにサイドカーをつけたものと食料と水があります!! あなたの服
もあります!! 殉教者達が、ダズバグルフ盗賊団のアジトに忍び込んで、持
ってきたんです!!」
続けてソンハは言った。
「リギーのいない『バラダラマスの町』に帰るんです!! あなたが出て行っ
た後に、あなたを侮辱していた者達は、奴隷として扱われていた者達に、殺さ
れてしまったのです。帰るのは9月ぐらいになるかもしれません。体も洗って
下さい!! 『ライファモンの神殿』に行って、『ゴペルチンジャーの銀の眼
冑』を手に入れましょう!! 『文明国スワンダ』までお供します!! 私は、
ピネイル女王の許婚なのです。『金融経済国』の、王子、…『ハヌワグネ時計
工場』のドゥエンの子供、なのです。『ソンパラメードの森』が抜けた時に、
一緒に下瓶の『ヘーミッド』に流された者です。もし、世界が元に戻ったら、
ドゥエンには会えないのでしょうけど、ドゥニン工場長には会えます。ドゥニ
ン工場長は、父親に会うのを楽しみにしていたそうです。私が、『ハヌワグネ
時計工場』を引き継ぎます。『文明国スワンダ』も、元の場所に戻して!!
…さぁ、行きましょう!!」
ソンハは言った。
僕達は、巡礼を抜け出した。駆けて駆けて駆けて、真夏の太陽の中を、走り
続けた。途中で、月の欠片に乗った狐のダズバグルフ盗賊団達の下っ端が襲っ
て来たが、ジョイントを削がれずに済んだお陰で、真空刃を飛ばして、撃退し
た。もう僕達は、空のネットホークを使って、指名手配されているらしい。ハ
ゲタカが襲って来たが、ソンハもらうが使えるらしく、火炎を巻き起こして、
撃退させた。砂漠の中を.に駆けた。パパロメの殉教者達が廻り続けている
「パパロメの間欠泉」は、殉教者達の足元を流れる砂漠の砂で覆われていたが、
その外を周るようにして、僕達は駆けた。後ろから白鼻心のダズバグルフ盗賊
団の下っ端は、僕達に突進して来たが、僕が右手にエメラルドグリーンの棘の
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史