ジェスカ ラ フィン
リギーは言って、剣を引き抜いた。血が噴き出した。僕は、ブレードを伸ば
して、戦うことにした。すると突然、リギーの前に、「バラダラマスの町」の
住民達が立ち塞がった。
「リギー様と戦うなら、俺達と戦え!! 子供達を巻き添えにされたら、大変
だ!!」
天井に蓋をしなかったヨークナッドの瓶壁から、ホメネカがお守りをしてい
たペレサが、泣き始めた。あやしたホメネカが、夜の空を見上げ、雷雲で天井
を覆って、前2末の手を、力を込めて、稲妻を作り、月の欠片を集め出した。
そして、磁石のようになった、前2末の手には、元の大きさの月ができた。そ
して、空で腹這いになって、お腹を「バーギャリアンの宇宙」に糸を吐くと、
腹に巻いた糸を切って、切った糸を、前の2末の手で持って、月にべったりと
くっ付けて、再び満月を吊るした。そして、ホメネカの背中から降りてきたペ
レサが、糸を伝って、原寸大のセロテープを欠けて磁石の力でくっ付いている
月に貼って復元して、玉乗りを始めた。
「うちの子供は、トメロスのサーカス屋になるのよ」
ホメネカが図々しく言った。親子共々顔は全然似ていなかった。ホメネカの
体の汗が、原子爆弾のように、音を立てて落ちた。近くにも落ちて、渓谷が凹
んだ。湖ができたようだ。僕は、汗を出した。睨み合いが、僕の体力を消耗さ
せた。
「エクアクスさん、ここで死ねるなら末望です。私は、あなたと今まで一緒に
旅してきました。一度、トーワラに殺されて、死にました。バートンさんには
結局会えませんでしたけど、『地底世界ソロンペパール』というものができて
いないのなら、天国で会えるかもしれません。楽しい旅でした。僕達にはどう
することもできません。『ダイラコダラムの世界』は、ダズバクルフ教の手に
渡ってしまいますが、僕達は、希望を願う人々の勇気となるでしょう。…僕は、
命にかけても、こいつと戦います。両親や弟は、こいつら盗賊団に殺されたん
です。僕は、『ヘーミッド』や、『ソンデワン』、まだ希望を持っている人達
のために、戦います」
ラロレーンはそう言って、回転式のジョイントガトリングで、リギーを打ち
抜いた。リギーは、吹っ飛ぶような格好となったが、すぐに体の傷を回復し、
剣で、ラロレーンを薙ぎ払った。左肩から右腰の上まで、真っ2つにされた。
ラロレーンは、血を吐いて、倒れた。それから、リギーに、踏み潰されて、右
肩を砕いた。マス目から体を出したせいで、はみ出た体が、消滅した。考え事
や、動きまで1ターンになることとなったからだ。思考までも。ラロレーンは、
地面を浮かせて、体の1部にして、起き上がったが、リギーに、バラバラに分
解されて、大爆発し、跡形も無くなった。
「ラロレーン!!」
僕は叫んだ。僕は泣き叫んだ。誰のせいだ?! 僕のせいだ。ソフサラコマ
は、胴体が切断された後でも、血を吐いて辛うじて生きていた。僕は、1瞬に
してリギーに顔から太股にかけて、胸にかけて、剣で斬られた。血を吹き飛ば
し、額から流れる血を押さえて、マス目に血を流した。1ターン分として計算
され、首を斬られた。血を落とし、落とした分、何百発も殴られ、斬られて、
皮膚がボロボロになって着ている服が黒色になった。膝を突いて、ただ立って
いた。僕は、負けを認めた。マス目が消えて、右目の上から横にかけて、大き
な炎を巻く黒色の、呪いのマポリアンの染みができた。
「よし、いいだろう。こいつらを、ジョイントを削ぐために、『ユンドググ汚
水道』へ流せ。汚れた魂を浄化させるのだ。1年後にだ。この、ソフサラコマ
は、腹部を縫合して、こいつよりも先に、『パパロメの巡礼』をさせ、『ライ
ファモンの神殿』で、名の決まっていない天井壁画を描かせるのだ。他の反乱
者の奴隷達と共に。完成させた後、『ユンドググ汚水道』へ流し、『ジャンガ
ズガンズの癌の森』の標的にさせ、完全に殺すのだ」
リギーは「バラダラマスの町」の1般市民に言った。ソフサラコマは、「バ
ラダラマスの町」の土民達にタンカーに乗せられて、連れて行かれてしまった。
僕は硬直したまま、何も言えなかった。冷たい風が流れた。リギーは、破壊さ
れた町の修復をただちにするように言い、その監督をしていた。冷たい.が降
った。僕は、縄の手錠をされた。そして、無理やり立て、と町の奴隷のリズか
ら言われ、鉄球の足枷をされた。僕は、ダズバグルフ盗賊団の狐に鞭を打たれ
た。鞭に打たれる度に血を流した。麻の奴隷服に着替えさせられた。食事は、
電柱に付けられた首縄の紐を伸ばして、地面に投げ出されたものを4つん這い
になって食べた。用はそのまま足した。恥で、「バラダラマスの町」の市民に
笑われた。「アカリの刑」。毎朝市場の通りを通る子供達に笑われた。食事は、
犬の糞を混ぜられた。食え、と言って、食わなければ、ソフサラコマを殺すぞ、
と言われた。僕は仕方なく食べた。皆が笑った。尿を飲むことはほとんどだっ
た。使えない金をぶつけて帰る者もいた。
「この方がリギー様に逆らった反乱者ですか!!」
巡礼に来る新しく入信したダズバクルフ教の人間の信者が、わざわざ「レー
ピオンドの町」から来た信者に向って言って僕に唾を吐きかけた。そんなこと
はしょっちゅうだった。奴隷以下の扱いで、立ち続けて4ヶ月が経った。
8月になった。炎天下で焼死したミミズや、蝉や、虫などを、皿に入れて、
「お前に『魅せる』為に死んだ。悔いを改めよ」
と「バラダラマスの町」の市民は言って、無理やり食べさせた。
「兎の命は無いぞ」
僕の口と胃の中は地獄のようだった。8月の中.に、第1回のパパロメの巡
礼が行われるようだった。一度だけ。「ライファモンの神殿」から出てきたソ
フサラコマがいた。痩せこけて、他の貧しい野兎と同じようだった。僕は駆け
出して走り出そうとしたが、狐のダズバグルフ盗賊団に棒で殴られた。ソフサ
ラコマは、此方を見向きせず、もう普通の兎に戻ったようだった。何も一言も
しゃべれないようだった。僕の糞尿を垂れ流す日々は続いた。世界中から、
「レーピオンドの町」の「フェザ山脈」と、此処の「ライファモンの神殿」と、
北東の「テンペライモンドの神殿」を礼拝に「ヘーミッド」の世界中からやっ
て来た。僕は、「バラダラマスの町」の「ライファモンの神殿」と並んで、町
の名物となった。いつしか僕は、?聖エクアクスの殉教?と呼ばれるようにな
った。ボロボロの衣服も装飾品(命の時間のペンダントも)も、携帯電話も取ら
れた。何処かにあるのだろう。ひたすら「バラダラマスの町」の目立つ所で立
ち、見物実の罵倒や嫌がらせを生身で受け止める。こんな刑が、?アカリ?と
いう女性が.在した時に、あったのだ。理由は分からない。恐らく、反乱軍か
革命軍のリーダーとなって、平和の為に戦ったのだろう。僕には分からない。
ただ、その時に悪の組織が.在していただけだ。パパロメと何か関係があるの
かと思った。そう思った矢先、リギーがやって来た。
「みんな、よく聞け!! 『ライファモンの神殿』の、『地獄への審判』の絵
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史