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ジェスカ ラ フィン

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自分の腕の綿などを売ってお金にしている人形もいます。あの水田にいた案山
子のリャンタがそうだったのです。今は畑が持てるようにまでなりました。脳
味噌の綿を売る者もいます。空になった者は、人間と同じように、人間の墓場
に埋められます。捨てられた人形を探しているのですね。ここのゴミ処理場に
は居ません。抜け殻は全て、墓場に埋めてありますから。『クランダ人形屋』
のツーチョム爺さんもそこまでやりません。末当は何度もチャンスを与えるの
です。決して捨てたりしません。大昔、あるペレンダという金髪の女の子が、
ゴミ捨て場で女の子のフェニスカという名の人形を0いました。その破れたフ
ェニスカという人形を、ツーチョム爺さんの元へ持って行きました。ツーチョ
ム爺さんはそのフェニスカという人形を治したのですが、そのペレンダという
女の子は、病気で亡くなってしまったのです」

.上がりの夕暮れの空は、晴れ晴れとしていた。.し寒くなってきたような
気がした。ソフサラコマと似ているレマスがなんだか青く見えた。レマスは赤
い.のような目をクリクリと動かした。

「…クランダ人形屋に行く前に、ぜひ道に迷った人形を探して来て下さい。き
っと、向こうも、あなた方を待っているでしょう」

レマスは言った。ゴミ処理場を出ると、僕達はブルドーザーとすれ違った。
もう星は出始めていて、空は黒くなり始めていた。

「…ねぇ、そのペレンダ、っていう女の子が0った、フェニス嘗ていう人形は
また店にあるのかなぁ?」

「もう売り切れたに決まってるよ。大昔の話だぜ。来年死ぬと思っている君が
言うのもなんだけど」

「そんなこと言ってないじゃないか!! …それはともかくとして、フェニス
嘗ていう人形は誰が買って行ったんだろう。人形は子供が産めるのかなぁ。だ
としたら、フェニスカの子孫がこの『ヘーミッド』の何処かにいるに違いない
よ。路頭に迷っているとは思えないけど、誰か心当たりのある人形がいるかも
しれないよ」

「人形は子供を産めないよ。でも、作ってくれた人が、子供を作ってくれると、
子供だと思うのかもしれないね。…とにかく、僕達を探してくれているかもし
れない、人形に会おう。そして、『クランダの人形屋』の、ツーチョムの爺さ
んにミレンドファンテの牛達の集会を中止する方法を聞こうよ!! ペリンガ
にもとうとう会わないといけないし」

ソフサラコマは気合を込めた。

僕達は国中を徘徊し始めた。多くの人形達が街をうろついていたが、ほとん
どは作業場で働くアルバイターばかりだった。末屋で立ち読みをする、フリー
ターにも会った。しかし、皆全員が、そんな話知るか、と言った。自分達は自


分達で自由に暮らしているんだと言った。空き缶を集めているブリキの人形が
いた。「サラーニャの森」へ観光しに行くと行って、アンドロイドの人形の団
体がブリキの犬を連れて出て行った。街はもの凄い数の浮浪者で溢れていた。
「クランダ人形屋」は、なんだか人形達の病院のように思えなくも無かった。
僕達は歩いて、砂漠に出た。「農業国ヘーメルカル」の宿じゃなくて、外のテ
ントに泊まろうと思った。



1泊して、「農業国ヘーメルカル」の周辺を歩き回った。夜になって、洋服
を着た人形の女の子が、トポトポと歩いて来た。僕達は、しめた、と思って、
その女の子に声を掛けた。

「おーい、何処から来たんだい? 僕達は…えっとその、…言いにくいんだけ
ど、家出した子を、ちゃんと養ってくれる家を探してあげる仕事をやっている
んだ。君は、迷子の子かい??」

女の子は、泣いて名前を告げた。

「私の名前はトマラトピと言います。北西の、田舎の村からハゲタカに襲われ
て、やって来ました。田舎は、ハゲタカに襲われて全滅しました。私だけが逃
げ延びて来たのです」

「君の村が全滅したって末当?」

トマラトピと言う女の子の頬の汚れを拭ってやったソフサラコマは言った。

「えぇ、末当です。『フェザ山脈』地方の状況が怪しくなって、こちらの村に
も被害が及んできたのです。『農業国へーメルカル』には、私のような浮浪者
がいると聞いて、ここまでやって来ました。…あなた方は、『農業国ヘーメル
カル』の国の役人ですか? 私を何処に紹介してくれるんでしょう?」

トラマトピは言った。ソフサラコマはそれに対して正直に答えた。

「僕達は、国の役人なんかじゃないよ。『クランダ人形屋』のツーチョム爺さ
んのところに行って、正直な話、君を連れて行って、ツーチョムさんに聞きた
いことがあるんだ。どうして、ツーチョム爺さんが人形さんを連れて行かない
と会ってくれないのか分からないけど」

「その話なら知っています。雪達磨のツーチョムさんは、昔、フェニス嘗てい
う人形を店に持って来たペレンダという女の子が病気で亡くなったのを知って
から、人形を修理に来る者にだけ、店を開くようになったというのです」

「……」

「ペレンダ、という女の子は、ゴミ捨て場の奥にあったフェニスカを持ち上げ
る時に、雀蜂に刺されてしまったのです。それが元で、ペレンダは、高熱で亡
くなってしまったのです」

「悲しいお話だなぁ」


僕は言った。そしてこう続けた。

「お店に来てくれませんか? 僕達は旅をしていて、クランダの人形屋のツー
チョム雪達磨爺さんがミレンドファンテの牛達の秘密を知っているのです」

月に皹が入っていた。

「まぁ、それは大変ですわ。さっそく私を連れて、『クランダの人形屋』にお
向かい下さいまし。私に協力できることがあれば、なんなりと言って下さい」

トマラトピは言った。



僕達は「農業国ヘーメルカル」に戻るために、砂漠を歩いた。街の外れの、
「クランダの人形屋」に着くと、僕達は、月を見た。

「昔、言い伝えでは、月の上に乗った者が、振り子を振り、月の光を浴びると、
命を失った人形達が動き出すという話がありました」

トラマトピは言った。彼女はどことなく、マスラトッチーに似ていた。シャ
ッターが店には下りていた。外は凍る程寒くて、シャッターに付着した水蒸気
が凍っていた。

「どうする? ツーチョム爺さんは眠っているかもしれないよ? ここはひと
まず、朝になるまで待とう」

「その必要はないですよ。ほら、裏口の扉に続く道の上にある部屋が、灯りが
灯っています。インターホンを押して、ツーチョムさんを呼びましょう」

「いや、お爺さんは眠っているかもしれないぜ。…でも外は寒いし、もしお金
を要求されて定理がこれ以上歪んだり曲がったらヤバいしなぁ…よし、しょう
がない。インターホンを押して、中に入れてもらおう」

僕は言った。

「そうですね」

トラマトピは言った。砂利の上にある石の上を歩いて、インターホンを鳴ら
して、しばらくして扉を開けてもらった。すると雪達磨が作業用のエプロンを
着て対.に.じた。

「人形を連れて来ているね。お入り、傷や怪我などを付けているのかい? 手
当てなら、今すぐ見てやるよ」
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史