ジェスカ ラ フィン
なって、集会をやっているというんです」
僕は言った。
「『農業国へーメルカル』には、ヨファンセ直行便は寄りません。一度『金融
経済国ヘンザウロ』に戻って、.西にある『農業国へーメルカル』に駱駝車に
乗って行かなければなりません。夜は車を閉じて、外に顔を出してはいけませ
ん。酷く寒くて、月や星が凍るほどですから。…オートバイでここまで来たの
でしょう? しかしこの町の状態じゃもうあなたのオートバイは跡形も無いで
しょう。ここはひとまず、『ヘルンズ川』上流のランピラ定期船に乗って、
『フィーダ峡谷』の河口の入口まで下りましょう。『フィーダ峡谷』まで、1
日あれば着きます。『フィーダ峡谷』から、ヘンザウロICを通って、『金融
経済国ヘンザウロ』に戻って下さい。そして、『金融経済国ヘンザウロ』で、
『アニャスガ駱駝車屋』というものを見つけたら、其処から駱駝車に乗って下
さい。駱駝じゃないと、ビニファド地方の砂漠は渡れないのです。過酷ですか
ら」
そうアンバスは言って、僕達に船の橋を落としてくれた。
「料金はもちろんタダです。『金融経済国ヘンザウロ』の『アニャスガ駱駝車
屋』の車代ももちろんお出しします。あなた方は『ヘミダグリンの町』を救っ
てくれたのですから。もしかしたら、駱駝車に乗っている間に、お仲間にお会
いできるかもしれません。私達はあなた方を、命をかけて御守りいたします。
ではお乗り下さい」
アンパスは言って、橋を上げた。船は出港して、1日が経過した。砂漠の岸
辺は煙立っていて、砂漠は金色に光っていた。砂礫から煙を上げ、石油で走る
船は『ヘルンズ川』を下って行った。フィーダ渓谷に着くと、僕達はランピラ
定期船のアンバス達に別れを告げた。そこから歩いて行くとすぐに、町があっ
て、ヘンザウロICがあった。入り口の前の、近くには、サボテンがあった。
車を借りて、ICを通った。ICからICまでがフィールドなのかなと思った。
「ハモネンメ高速道路」を過ぎて、再び「金融経済国ヘンザウロ」に入った。
カーナビでアニャスガ、と入れて見ると、「金融経済国ヘンザウロ」の.東の
部分、ファンタロの爺さんの家から北東ある、「アニャスガ駱駝車屋」へ行っ
た。近くでICに入る前に借りたレンタルカー屋の店舗で、車を返して、「ア
ニャスガ駱駝車屋」に入った。店を、紫と白の縞のドレスを着てエプロンをし
たお婆さんが切り盛りしていた。
「いらっしゃい。…何だね。何処に行きたいのかい? 『農業国へーメルカル』
かい? あそこはビニールハウス栽培が盛んだよ。砂漠じゃ育てられないから
ね、良い土壌を使って世界中の主な農作物を育てている。近くの森で果物を作
って、国全体でびっしりとビニールハウスで食べ物を作ってるんだよ。しかし
ほとんど『ヘーミッド』の奥の街へは出荷しないがね。大抵は、『ヘミダグリ
ンの町』のコンテナ船に乗せて、『ヘミダグリンの町』や此処『金融経済国ヘ
ンザウロ』や、『レーピオンドの町』に送って終わるんだがね。なにしろ人口
が半端じゃないから、作ってる人達には大変なんだよ。私の名はアゼンダラス
と言います。駱駝はこっちにいるよ。ついてきな」
アゼンダラスは言って、店を出て、裏に回った。裏には駱駝が2頭、餌桶に
首を突っ込んで食べていた。
「あぁ、いい子だねぇ。…代金はいただくよ。『農業国へーメルカル』へは、
私の店の従業員のゼピオンが駱駝の手綱を引っ張る。3日ばかりで着くと思う
が、頑張っていきなさいよ」
そうアゼンダラスは言って、駱駝が2頭引く、古代の文化の彫刻、飾りを付
けた車が青いシャツと灰色のズボンと黒い靴を履いたゼピオンとアゼンダラス
の手によって車庫から出された。布とクリーナーで綺麗に磨かれて、毛布や食
料を車の後ろや中の椅子の下などに入れて、準備が整った。
「気をつけて行きなよ。今『農業国へーメルカル』では、西の『ロザイの川』
のさらに西の『ダマイ湖』でミレンドファンテの牛達を集めて、『ダマイ湖』
を沈めようという盗賊団のダズバクルフ教のデモが行われていることの話題で
持ちきりだよ。なんでも、上瓶の『ソンデワン』の世界からやって来た、人間
が、盗賊団の下っ端をやっつけたと言って、彼を要注意しているらしいんだ。
ペリンガという、元犬らしい」
「何だって!! ペリンガが『農業国ヘーメルカル』にいるのかい? ラロレ
ーンも一緒なのかな? 早く『農業国へーメルカル』に行って、事情を探ろ
う!!」
ソフサラコマは叫んで、僕を駱駝車の奥に乗せた。車のドアが閉まると、
「金融経済国ヘンザウロ」を出た。ゼピオンが台に乗って、駱駝は息を切らさ
ずに走り続けた。
「もう1つの宇宙を作る、ってファンタロの爺さんが言っていたよね。ミレン
ドファンテの牛達は、体の染みを集めてどうする気なのかなぁ?」
すると台の後ろの窓が開いて、ゼピオンがそのことについて答えた。
「ミレンドファンテの牛達は、『神の牛』と呼ばれ、体の染みを失くすと、罰
として死んでしまうのです。ですから、古くから、襲われた時は、大移動を繰
り返すのです。染みが抜かれた後は、乳が真っ赤になって、地面に垂らした者
は、石油をトマトみたいに真っ赤にし、真っ白になると、死んでしまうのです。
牛乳が飲めなくなると私達は蠍が風に撒いた毒を予防する抵抗力をつけること
ができません。牛乳は、水の.ない地域にとっては、貴重な水分補給物なので
す」
太陽が西に傾いていた。砂漠が橙色に光っていた。3日月が、どうして出る
のかと思った。ホメネカは、きっと、「フェザ山脈」の動かない時計の針でも
見ているのであろう。よく見てみると、空に、「文明国スワンダ」と思われる、
星のようにみえる1風変わったものが見えた。
夜になると、ガラス窓が曇った。ゼピオンはコートと毛皮とマフラーをして、
駱駝に鞭を打ち続けていた。駱駝は、休むことなく走り続けた。一度止まって
焚き火を焚いて作った、スープとパンを、車の中で食べた。星が流れた。きっ
と、トメロスだろう。僕はファンタロ爺さんのおかげで.しは心が回復したよ
うな気がした。冒険を続ける為だ。心を診察して、お金をもらうのは、ちょっ
とな、と思った。ゼピオンが、寒いでしょうけど、と、窓ガラスを開けて、言
った。「ヤタランタ通行所」の引きガラスに似ていた。磨かれていたが、.し
曇っていた。
「『農業国へーメルカル』の遥か東には、『サラーニャの森』という森がござ
いまして、なんでも、『ビニファドの砦』の呪いを解くと、森が呪いを解いた
者達の意思に自由に従う、魔法の移動船になるというのです。しかし、ミレン
ドファンテの牛達の件もありますし、その『ビニファドの砦』は、遥か西方の
大陸を監視し続ける展望台となっているのです。『サラーニャの森』にはダイ
ヤグラスというダズバグルフ盗賊団の、蟋蟀のゲンザガルが昔から森を守って
います」
ゼピオンは言った。携帯電話の定理のメールを見てみた。方位磁針が北東に
向いていた。車から出て、灰色の砂丘に乗って、ソフサラコマと空を見た。ゼ
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史