ジェスカ ラ フィン
ファンタロは僕の夢を鑑定して言った。
「私は君の夢の絵なんて売ったりせんよ。貴重なものだがね。死んだ人の、夢
を商売にして売っている。遺族からその死体を買うんだ。脳味噌をスライスし
てスライドグラスに張り付けて、カバーグラスを被せて、プレパラートを作っ
て、顕微鏡で見て画帳に移すんだ。それが高く売れる。見たい人にしかその夢
は伝わらないんだ」
ソフサラコマは、
「『へミダグリンの町』にまで行くのに、オートバイが必要なんですが、どう
すればいいのでしょうか」
とファンタロに訊いてみた。
「『金融経済国ヘンザウロ』に来たのなら、まず儂のところに寄るのが1番じ
ゃ。夢は、ずっとそのまま持っていてしまうと、卵の黄身と白身が殻から、す
っと溶け出てしまうような感じになって、心の下膜が重くなって歩きにくくな
ってしまうからの。『地底世界ソロンペパール』では、『パパロメの間欠泉』
が人々の夢を吸収して、分解して、紫色の光の破片にして、地底に溜めている。
『ソンパラメードの島』の宝石の星が砕けたのが埋まって砂浜になったものが
そのまま天井から降ってきているような所だと言う。地底世界には『インニニ
スの街』があって、『ジャンガズガンズの癌の森』がある。『デンダララン』
へ向かうには、『インニニスの街』の鉄の牢を開けなければならない。しかし
その方法は誰にも分からないという。君の夢を見させてらった。株券じゃなく
てお金をあげるよ。ここでは株券よりお金の方が、価値が高いからね。お金で
オートバイを買いなさい。自転車はその、携帯電話で引き取り屋を呼んだらト
メロスに返してくれるだろう」
「仲間のウィズウィングルが、『へミダグリンの町』でくじを当てて、.西の
『レーピオンドの町』まで行ってしまったと言うんです」
ソフサラコマは言った。
「それは大変だ。とりあえずお金を渡そう。はい、これだ。西の『農業国へー
メルカル』で、ミレンドファンテの牛達の集会が行われているのを知っている
かい? なんでも、ダズバグルフ盗賊団が、牛達の体のシミを寄せ集めて、も
う1つの宇宙を作ろうとしているらしい。『港町へミダグリン』には、北の
『ナギャゾグビの長城』へ繋がる牢がある。『ナギャゾグビの長城』は、パパ
ロメの間欠泉を見渡す、1望できる、展望台じゃ。3500年前にできたと言
われているが、誰が建てたのかは判明できていないのだと言う。おそらくは、
『ペパラロンテ』の『トダンダの管』の奥の『アーリャンスンゲサの墓』のサ
ッザ王が建設したものだと思われる。砂が吹き出すんだ。そりゃあ世界最長の
『シャフキウの山脈』の連邦と同じ長さの城を作りたくなるさ。その時から
『ヘーミッド』の外に砂が溢れ出した。遥か太古には、『ヘーミッド』の下瓶
の『ヨークナッドの瓶壁』があったと言われているが、今は誰も確認できない。
片方は、上瓶の、勇者達が冒険したと思われる、『ジュラーネの水の落ちる崖』
の近くの宇宙で、瓶壁の破片が回り続けているという。それ以上のことは分か
らない。しかし、もしその瓶壁がもう一度復活して、この世界の『ヘーミッド』
を砂漠の砂で埋め尽くしたら、我々はもう逃げ場が無い。月のホメネカは、き
っと、その計画を.行した後に、月を下瓶の上に置いて、蓋をする気だ。そし
て、…砂時計をひっくり返すつもりだ…」
僕達は息を呑んだ。
「もう一度君達が『文明国スワンダ』に行けば、王女が復活しているかもしれ
ない。彼女と協力して、この世界を救ってくれ」
ファンタロは僕達に頭を下げてお願いした。僕達はファンタロに礼を言って、
外へ出た。
「ホメネカは、大変なことをやらかそうとしているんだね」
ソフサラコマは僕に言った。突然メールが届いたメロディーが鳴った。メー
ルを開けて見ると、こんな風に書いてあった。
「老人は、君の自宅の玄関前で.の日に傘を玄関で叩き水を落とし銀河系をつ
くる。神に宇宙を剥ぎ取られ地震が起こる」
「なんだ? これは?」
「きっとメールの送り主の世界で起こったことの話だよ。その人の世界では、
神に、宇宙を剥ぎ取られたんだね。きっと、ホメネカとリギーと他の盗賊団は、
何らかの儀式を行って、ヨークナッドの瓶壁を復活させるつもりなんだ。そし
て、この世界を砂で満杯にする。『文明国スワンダ』へは、どうやって行けば
いいんだ? また、『ジャトジャス遺跡』のように、階段を通って、浮遊世界
に行かなくちゃならないのか。だとしたら、『マタハラーの神殿』からは、
『ソンデワン』の世界に帰ることができるのか。分からないけど、僕達は、ま
た、『文明国スワンダ』の亡きタイリュー王の『トヤランズ城』に行かなくち
ゃならないみたいだ。命の時間が関係しているのかな?」
辺りはすっかり夜になっていた。星が低いくらいに瞼に付き、凍りついたよ
うに思った。虹のような橋が凍り付き、下の縁が縮まって見えた。僕達は中心
街に戻ってオートバイ屋へ行った。街では、不良がざわめき、オートバイのク
ラクションを鳴らして、排気ガスを凍らせていた。夜になると零下になる地域
だ。.年若者風の大勢が、屯していた。夢・幻。彼らは厚い壁になっていて、
僕の胸を押し付けた。自転車を押し進めるようにペダルを漕ぐと、オートバイ
屋への道は開いた。彼らはいつの間にか消えていた。彼等のマフラーが印象に
残った。地面の雪に埋もれて、人々に踏まれて凝結していた。僕はそのマフラ
ーを警察に届けようかと思った。随分前に曲がり角を過ぎると、変わったマー
クのあるオートバイク屋があった。ドアをノックして中に入って見ると、バイ
クがたくさん置いてあった。
「お実さん、運転免許証を持っているかい? 持っていなくても、お金さえあ
れば大丈夫だよ」
中年男性はズル賢そうに言った。それはスーチヤ店屋の店長だ。
「代金は株券でもいいけど、現金や定理でいいよ。さらに穴が開くと思うけど」
彼は笑った。
「『農業国へーメルカル』には、『クランダ人形屋』があるよ。ツーチョムと
いう雪達磨のジジイが店屋をやっていて、ゴミ捨て場に捨てられた人形達は、
必ずクランダの店屋に帰ってくるんだ。墓場が開くみたいにね」
ハレスというスーチヤ店屋の主人は僕達を脅した。
「その人形屋に入りたかったら、捨てられた人形を見つけて一体連れて来い。
お前達ならできるはずだ。『農業国ヘーメルカル』の西の『ダマイ湖』で行わ
れている謎の牛の集会の謎を解くヒントをそのクランダのツーチョムという老
人は握っておる。『フェザ山脈』の麓の『レーピオンドの町』は、『タイダグ
川』の河口近くにある、『ガヴァムテデザの洞窟』を深く潜って行かないとい
けない。砂漠の高速船ヨファンセが『レーピオンドの町』まで走っているが、
上瓶の『ソンデワン』からの侵入者が出てきたために、運航が停止してしまっ
たのだ。烏からの情報なのだがね。空のネットワークの話は末当らしい。しか
し、西のテゾドフブンド・テイトート地方まではネットワークが届かないらし
い」
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史