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ジェスカ ラ フィン

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いたいんだが、1部上場の株券が1枚も持っていないんだよ。ほら、10分で
1枚、って書いているじゃないか。差出人の分からないメールの定理でなんと
か株券を1枚出してほしいんだが。無理かい?」

「いや、そんなことはありません。いいですよ。メールの定理を見せて下さい。
換算します。ファンタロお爺さんの家へ行きたいんですね? 場所は知りませ
んが分かりました。今、1枚出してあげましょう」

ヘッスンはそう言ってポケットから1部上場の株券を出してくれた。

「あぁ、だいぶ定理が伸びたり凹んだりしている。大丈夫です、鉄のようにま
だ使えます」

ヘッスンは言って、スクーターで遠くに行ってしまった。外では街路樹など
が植えられていたが、砂でまみれていた。人々は、風というよりも砂に追い立
てられていた。ソフサラコマは回転椅子の上に乗って、検索台のボタンを押し
た。ソフサラコマが株券を入れようとすると、

「あれ!? 株券じゃなくてピザの1切れになっている??」

と叫んだ。

「おい、ソフサラコマ、ピザじゃなくてこっちが株券だよ」

「ヘッスンのマジックだよ。レシートというか利子というかおまけが多いね」

コーンのたっぷりと乗ったピザを僕はごみ箱に捨てた。なんとか株券を入れ
ると、機械が作動し始めた。『ファンタロ』と名前を打ち込むと、1番初めに
出た。住所を印刷すると、僕達はビルを出た。



自転車に乗って、「金融経済国ヘンザウロ」の中心部の通りを出た。2時間
ぐらいして、暗い色をした工場の向いにあるファンタロ老人の家に着いた。こ


こまで来ると、砂漠の砂は国領に入ってきていないようだった。玄関前の門に
ついているチャイムを鳴らすと、

「どうぞ」

と声が聞こえた。自転車を横にしてかけ、石の上を歩いた。扉の鍵が開いて、
僕は扉を開いた。茶色いサンダルを履き、薄水色のシャツを着、灰色のズボン
を履いた、ファンタロ老人と思われる老人が立っていた。

「1人暮らしだよ。人の夢を聞いてアドバイスしておる。株券…と言いたいと
ころじゃが、定理を持っておられるようじゃの。それを見せておくれ。…そう
すれば、タダにしてやろう。…ほう、素晴らしいものじゃ。よっしゃ、無料に
してやろう。お入りなさい」

ファンタロはそう言って、僕とソフサラコマは中に入るように勧めた。

部屋の中に入ると、カバーのかけられた2つのうちの1つの椅子に座らされ
た。ソフサラコマは隣に座った。部屋の窓はカーテンで閉められていた。ファ
ンタロは、真向いのテーブルのある椅子に座った。

「私は3つの夢を当てることができる。夢は、古に生きた英雄達の人生を、睡
眠時間を利用して、見させるのじゃ。脳の義務教育とでも言うのじゃのう。不
思議なもんで、誰かからそう決められているのじゃ」

ファンタロは言った。

「儂は夢占い師じゃ。昨日、お前が来ると思って当ておった。…サーカス屋の
トメロスを知っておろう? 奴は、空に瞬く星に、指を重ねて、腕を振り切っ
た方向に星を落とすことができる。あれは君の夢じゃ。子供は、特にクリスマ
スのサンタクロースを願う子供は、流れ星を見るが、それは、見た夢を全て理
解した、1人で旅を続けているような、子供達のことだ。トメロスのような子
供が、その役割を担っているのだ」

ファンタロは微笑んだ。

「君の1つの夢。それは、…空中ブランコじゃな? 君は怪盗ジャックに狙わ
れて、降3して仲間になった後、月から出る塔に、糸を放して、地上から月へ
上がろうとする。闇が襲い、空気が冷たくなってきた頃、時間が経って、布団
から起き出す。君の見たい夢であったと同時に、見たくない夢だったと。この
夢の結果は、空に、水晶が生まれたことじゃな」

ファンタロは続けた。

「2つ目の夢じゃ。君は砦を見ている。君は無意識の内にここが夢だと気付い
ている。君は『金融経済国ヘンザウロ』に着く前の林で、変な夢を見た。夢は
ダダイズムによって構成されている。見たものや空想したものや欲望がくっ付
き、印象を持って、夢の中にダンジョンを作る。もう夢が終わるなと思った時
に、君は心臓の止まった世界に舞い戻ることになる。この夢にもたらされたこ


とは、君の夢がダダイズムを持って作られているということが分かったことじ
ゃ。勿論違うことも検討している。夢を見た後の夢は夢を見ていない起きてい
る時間に足されるという」

ファンタロはコーヒーを飲んだ。僕は、その煙が、僕の伸びた口髭にふわふ
わと引っ掻かればいいなと思った。

「3つ目の夢じゃ。君は学校に来ている。全員裏切り者の人間が君と外に出な
い学校生活を送っている。君は片足が無いような視線で生活を送っている。不
良のような現.で末当のクラスメイトだった生徒達がいつの間にか教.にいる。
現.の夢と現.ではない世界の夢がある。合わせて3つ目の夢には4つの世界
がある。君は胸にメリケン、という代物を抱いている。それが頭の皮膚の温度
にそっくりである。このことから得て来たものは、この夢から出られないとい
うことじゃ。夢が数字で表される。数値で表される。君は常に殺される。夢を
儂が語り代ることによって、君は心の治療を済ましておる。夢の正体とは一体
何なのか。儂自身は、新たなる幻の冒険の入り口だと思っている。君が体の疲
れを癒す時、君は女神パパロメのお父上に任されて、睡眠の時間を極限までに
縮めて、.知への永遠の周回を繰り返している。君は、他人よりも、宇宙がひ
っくり返るよりも、不思議な船に乗って旅をしている。君はその冒険を.えて
いない。メールを見よ。其処に、答えが載っているはずじゃ」

ファンタロは僕を諭すように言った。外はすっかり夜になっていた。見たこ
とも夢だと思うようになった。僕はそのことを大切にしよう、と心に誓った。
カーテンが揺れていた。僕は、ソフサラコマが埃臭いと感じるようになった。
まるで縫いぐるみじゃないか。

「儂は夢を、君の夢を繋げている。そして生き物の夢を作っている。夜中に煙
突に子供や大人の夢を入れて、土方仕事の服を着て、配っている。赤い服、い
つもと同じ服ではない。君の夢を繋げると、この、『ヘーミッド』の、空のよ
うになる。君が譬えたものは、空を、あんなにも空にしてしまった」

ファンタロは言った。カーテンを開けると、空に茂みがあった。カーテンを
閉めて、また同じ椅子に座った。

「君の夢を商売にしている輩が、君の知っている何処かにいる。忘れたほうが
いい。君はまだそこまで辿り着けない」

ファンタロは僕達にコーヒーを足した。

「画帳のようなものだよ。1枚うん千円で、売っている。それを手にとってず
っと眺めている。君は夢の中を出ると小説に向嘗ている。君はまた同じビデオ
を見ていると思っている。この人生は2度目だと思っている。いやそれは違う
と脳は言う。崖から落ちて発想を発展させるかこのまま末を売るかだ。結局画


帳が高く売れるんだよ。…君は、ピアノより、絵の方が好きだと思っている。
よろしいね?」
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史