ジェスカ ラ フィン
ラルドグリーン色に光る、森の隣に小屋があった。馬車の車輪が外壁に掛嘗て
いた。畑も無いのに、鍬や干し草を刺すフォークがあった。地面は黒色だった。
水の落ちる音がした。地面に当たった鍬が鋼鉄色に溶けて小さな水溜りを作っ
て止まった。僕はびっくりして、目をパチパチさせると、元に戻った。扉をノ
ックすると、冷たい皮膚を持った爺さんがカチャ、と音を立てて開けてきた。
「何だね? ところで、犬を見なかったかい? 森へ駆けて行ったのかと思っ
たんだが。私の名はハナラ。髭を剃るのを忘れていた」
確かに無精髭が、顔の表面を真っ白に覆っていた。体温が出ているのかと思
った。茶色の肩を暖めるランニングサイズの羽織を着て、鼠色の茶色の縞模様
が通っていて、茶色のサンダルを履いていた。中は闇だった。流れてくるよう
な固体のゼリーの感じがした。ハナラ老人はジョイントで蝋燭に火を灯した。
「私は『シャナイモン』の船守だよ。巨大螺旋管、『ペパラロンテ』の入り口
の『シャナイモン』さ。『デンダララン』の『リッドホール』では、へッゼ・
ジターニが海水と時間を調節して、水の関守をやっている。私達は、施設の守
をやっている。『フェザ山脈』では、トーモンという男が灯台守をやっている。
山の中に、天からの授かり物である『フェザ灯台』が伸びていて、中から外を
照らしている。遭難者はいないんだ」
コーヒーの入ったコーヒーカップの上に乗っ嘗ているフェザ山脈のミニチュ
アのようなものに、雪が積もっていた。コーヒーと溶けて…温くなってしまえ
ばいいと思った。
「あのコーヒーを御馳走になってもいいですか」
「構わない。温いかもしれないけど、暖まりなさい」
クッキーを食べて外に出て見ると、金の使われていない入れ歯を渡された。
これを持っていると森に干渉されにくいしし難いし、「シャナイモン」から
「ペパラロンテ」での間、重力を決めることができるという。コーヒースプー
ンが溶けた。僕は森の中に入った。動物の産毛が立った。緑の空気に包まれて、
それは木々から蒸散しているのだけれど、僕の傷は治った。おまけに服の破れ
た所も直った。ピアノが傷ついたことを傷んだ。それは多分、僕は感性が豊か
だから。
森は、
「『ヘーミッド』には移動する小さな森があるよ」
と言った。森の奥には「シャナイモンの洞窟」があった。鳥達は皆羽を休め
ていた。エメラルドグリーンの上に流れる水が透き通っていたがその奥の景色
は見えなかった。草に触ってみると泡が尖った先端に動いて、僕をじっと見て
いた。僕は草を離して「シャナイモン」の中へ入った。洞窟は、蛍のようなも
のが飛び回っていた。だが、数は.なかった。
すぐに、「ペパラロンテ」の「ペロジョジットの管」を降りた。管の色が、
エメラルドグリーンの色だったので、周りの景色はすぐに明るくなった。僕は
凄く緩やかな艶々な坂を下りていった。石や砂や岩や岩盤は後ろで切れた。
「えっ…宇宙の色? 海の色? 暗い黒のはずなのに青色だ。まるで水族館の
よう」
と僕は言った。思わず。マリンウェイが「ペロジョジットの管」に螺旋状に
巻いていて、何処からかアザラシがやって来た。
「ヘイ!! 僕は海豹のへップだよ。僕の声が聞こえるかい? もう.しした
ら先に、まっすぐになるところがあるから、そこまで歩いて来てくれよ!!」
と言った。2時間ばかり歩いた。
「全然真っ直ぐにならないじゃないか!!」
僕はへップに叫んだ。
「僕は暇だからねぇ。ずっと『ペパラロンテ』の外をぐるぐる回ってるの
さ!!」
と言った。そして、目を閉じて口を開けて、髭を擦って、腕を広げて欠伸を
した。そしておやつの.立を食べた。
「たまに烏賊が通るんだよ。引っ張ったら餅みたいにガムみたいに伸びるんだ
ぜ」
と言って笑った。
「水族館にしてねぇ、お金を稼ごうかと思うんだよ」
ヘップは言った。そして、
「ヤッホー!!」
と叫び、自分の顔を見てにやけた。
「君は能天気だねぇ。やっぱりこのままこの管を螺旋状に下りて行くのかい?」
「いいや。『ペロジョジットの管』の終わりぐらいから、『ヘンラの管』が先
の見えない迷宮になっている。牛の乳房の欠陥みたいにさ。『ペパラロンテの
管』が、『デンダララン』に張り付いている」
とへップは言った。
「また此処みたいに景色が変わるのかい?」
僕は訊いた。
「あぁ。辺りはプラネタリウムの天井のように迷路トンネルに張り付くみたい
な。『トダンドの管』に着くまで、ここから1週間かかる」
僕はへップの視線に合わすように重力を操作した。すると泡が出た。
「僕は案内人のようなものだからね。ここからはゲームで、君は盗賊団と戦わ
なくてはいけない。管の下にマス目を走らせ、君はダイヤグラスのルールに従
わなければならない」
ヘップは真剣な表情で言った。
「もう今日はここで寝よう」
そう言ってへップは透明な管の外の灯りを消した。宇宙の星が出ていた。
「管は暖かいよ。僕もマリンウェイの水をお湯に変えて眠るよ。おやすみ」
ヘップはそう言って底に沈んでZZZ…という文字を出した。僕はすぐに横
になって触ってみると、なるほど、床は暖かかった。何も音がしなかった。そ
して眠った。
目を.まして起きると、へップも何故かつられて起きた。
「まだ10分の1も来てないじゃないか。600km昨日歩いたんだけど」
僕は言った。
「ジョイントと金の入れ歯の力で焦れば焦るほど、1歩を踏み出す距離が全体
の『ペロジョジットの管』の長さを縮めたんだよ。1.僕はモンスターで、ダ
イヤグラスで言うと、ポーンなんだよ」
そうヘップは言って先にあるバナナケーキを指差して食べていいよと言った。
バナナが丸ごと入ったケーキだった。水も頼んで飲むと、お腹が1杯になった。
僕は3日歩いた。『ヘンラの管』の入り口はとても素敵な装飾で埋まってい
た。
「あぁ…僕はここでお別れだよ。さよなら…」
ヘップは水の勢いに流されて宇宙の下に落とされていった。白いハンカチを
振っていたような気がした。でもびしょびしょだった。入り口を入ると、流星
が流れていた。僕の前に学舎のタイルぐらいの大きさのマスが出てきた。僕が
ふざけて1歩出ると、マスは1個か2個増えてぐん、と伸びた。戻ると1マス
に戻った。宇宙が水みたいに満たされていると思った。
「うわぁぁ…あんな所に恒星があるのか…」
そう思って管に両手をついて顔を近づけた。マスは張り付いた両手の高さの
上のところまで伸びていた。
「どこから敵は出るんだろう…?」
すると、へップがジョイントで『ヘンラの管』にマリンウェイを近づけて、
「おーい!!」
と手を振って叫んだ。
「何だい!?」
と行って近づいてみると、へップは高級そうなグラスを持って、コーラを注
ぎ、星の凝縮した宇宙を注いだ。
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史