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ジェスカ ラ フィン

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「…6000年前に滅亡した『古代国パルスミンド』が現れています…」

パパンは白い息を連発させ、肩を震わせて、黒ずんだ顔に眼鏡を上げた。な
ぜか、ひんやりした空気だった。子供が割ったような人参に似た歪な岩の塔が
何千末も立ち並び塔の中にいくつもの4角い窓代わりになってのであろう穴が


開いていた。ソフサラコマとウィズウィングルは懸命に見えない太陽を見つめ
ようとし、黙っていた。僕はゴクリ、と唾を飲んだ。冷たい、峡谷の世界が現
れた。海藻が岩盤に張り付いていた。魚介類が死んでいた。細かい穴のある、
硫酸をかけたような岩石が転がっていた。

「いつ頃、『古代国パルスミンド』は創られたでしょう?」

ペリンガはパパンに聞いてみた。

「おそらく太古の文明が私達の時代よりかなり発達していた頃でしょう」

パパンは言った。

「…調査機を上げて上の様子を調べてみました。…海抜0mの気温−20℃で
す」

「何てことだ!! 太陽が異常公転でもしたのか」

ダビャーズは驚きを隠せない様子だった。

「気温が−20℃…誰かがジョイントを使って意図的に温度を設定したとしか
思えん。調査機をさらに飛ばして、上の様子を隅々まで調べ回ったほうがいい」

「分かりました!! さっそく調べてみます!!」

ジョンプは言って、船の中に戻って、コンピューターを打ち始めた。すると、

「大変です!! …何者かに、調査機を破壊されました!!」

と、ジョンプはダビャーズの元に大急ぎで戻ってきた。

「…ならしかたあるまい。『古代国パルスミンド』の中心の『ユンデサの頂上』
には、『へサノサの洞窟』への入り口があります。迷路を抜けると、『ペパラ
ロンテ』という螺旋を『デンダララン』というポールに巻いた伝説の下管に向
かいます」

ジョンプは汗を拭った。

「『ペパラロンテ』は3つの区域に分かれます。1つ目は、『ペロビョジット
の管』、2つ目は『ヘンラの管』、3つ目は、『トダンドの管』です」

「…遥か太古の書籍に載っていたのです。4つ目の『ヒレンバの管』より先の
世界の端から下の世界の国には、3500年のうちに盗賊団が『ヘーミッド』
の国を作っているようなのです」

ウィズウィングルが周りの景色を見て呟いた。

「他の国は一体どうなったのでしょう? …ここからじゃ、『宗教国スギミダ』
どころか、何も見えない…。ここは、どこです?」

どこからか迷い込んだ烏の群れが海溝の隙間を飛んでいた。真夜中の真冬の
ように暗かった。ひどく寒い。

「『パチャラグルの流転』をしたんです。だから月もホメネカもいない」

パパンは呆然と立ち尽くした。

「えっ…!?」


「ここは下の宇宙、俗に言う『バーギャリアンの宇宙』です。灼熱の太陽が上
の宇宙とは違って公転の軌道が狭まっているんです。その熱さで我々を殺そう
としているんです。今は寒いですが。タイムリミットが近い!!」

「『パチャラグルの流転』って一体何なんです?」

僕はダビャーズに聞いた。

「私達の住んでいる上の世界と、.知の世界である下界での宇宙の立場が逆転
する現象です。神と呼ばれるくらいのジョイントの使い手じゃないと『パチャ
ラグルの流転』は使えないのです。あまりにも強大な力のため、身が滅んでし
まうくらいなもので…」

「どうしてそのようなことを…僕達の『スワンダ』は、下の世界の盗賊団達に
狙われて、命の時間を永遠まで延ばしてしまう…そんなことになったら、もう
この世界は終わりです…」

「星の降らない宇宙。星の煌かない宇宙。ホメネカの垂れ幕となった宇宙の布
と流星…永久の時を超え、宇宙が剥がされると、冷たく吸い込まれる、『テン
ピョーテイレンの宇宙』になってしまう…」

ドラゴンのシャンクスは我が身を失ったようにぼーっとして歯を出し、闇の
平面を見ていた。僕達は誰も喋らなかった。黙っていて、ここから「ハヌワグ
ネ時計工場』まで戻ってしまいたかった。

「海水が、何千年もかけて、岩盤を削ったのさ…そして峡谷ができた」

ようやくエスピショーのヘッドライトをダビャーズが浮遊船の中に入って点
して前方を見た。僕達が見ていた闇の奥には何も無かった。

「伝説では…『ペパラロンテ』への降り口を下って、『ランサデラ』の入り口
の近くに行くと、穴を守るハナラという老人がいて、森と小屋があるようです。
しかしそこまで辿り着いた者はいません。私達の誰か1人でもこの世界を戻せ
ばいいのです…下の『ヘーミッド』の世界の何処かにある、『テンペライモン
ドの神殿』から、セネアトレクの夢へ行くことができれば、王を助け、姫を助
け、盗賊団を倒すことができるかもしれません」

とシャクトラが言った。



僕達はぼろぼろに朽ち果てたであろう地上と、海底の狭間にある「古代国パ
ルスミンド」へ上がっていこうとした。すでに盗賊団は乾いた海底の山に手下
達を放している気がした。風が激しく吹き荒れ、赤い砂埃が目に入った。魔物
の血の匂いが生温い風に微かに混じっていた。何処かで水の滴が落ちた。海抜
何万メートルか分からない海溝の中で、僕達の視界は彷徨っていた。調査員の
ダビャーズやシャクトラやパパンやホートロやジョンプ達が、サイドウォール
のライトを点けて、エスピショーの修理に取りかかった。僕達は船内にいるわ


けにはいかないので、寒い外で待っていることにした。皆でバートンの話をし
た。とにかく、セネアトレク王とパパロメ王女とルルルフ姫を助けなければ、
話が進まないと思ったので、バートンがいつ生き返るかは分からなかった。消
えた「文明国スワンダ」も、下瓶の「ヘーミッド」にあるとすれば、気の遠く
なるような話だった。外へ出る前に毛皮のファーのついたコートを着ていた。
僕はエスピショーのサイドに頭に腕を組んで、寄り掛嘗て、黒く冷え切った流
木・木を持ってきて火を付ける道具で焚き火に当たっているウィズウィングル
とペリンガとラロレーンの慌てぶりを見ていた。ソフサラコマは尻餅をついて、
耳を火に当てて震えながら体を暖めていた。僕は芋があれば焼き芋が作れるの
にな、と思った。調査員の人達はドリルを出し、エスピショーの内部をいじっ
ていた。盗賊団に見張られているのは分嘗ていたが、何も襲ってこないのはな
んでだろうと思った。修理と焚き火の音以外、何も聞こえなかった。僕もサイ
ドを離れて、しゃがんで手を広げて暖まった。すると突如、海溝の入り組んだ
溝を、盗賊団が壁を跳んで、走って来た。僕達は、斜めに飛んで、エスピショ
ーを庇うような意識をして、盗賊団の視線を覆い隠して、空へ飛んだ。手裏剣
が飛んで来た。僕達は上手く避けた。突風の固まりを避けると、振り向くと、
ソフサラコマは盗賊団の1匹の狐と格闘していた。エスピショーは…。暖かみ
が外れて、瞼の奥底に沈んで、3匹の盗賊団が両手を広げて姿を現した。蝗の
ハンラチェカーと、青虫のギュリュフと、蜥蜴のスウォーダだ。ハンラチェッ
カーは羽からブレードを出して、僕を切り裂こうとした。ギュリュフは僕のブ
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史