ジェスカ ラ フィン
砂がエメラルドグリーンの海に伸びていた。流氷の断片が、断崖にぶつ嘗て、
ガン!! とぶつ嘗て、砕けて、沈んでいった。エメラルドグリーンの流氷が
近く、彼方に見えた。緑の眩しい「宗教国スギミダ」に着くと、黒い地面が懐
かしく感じた。突風を上げて、ぞくぞくとパーキングエリアのポートに下りて
きた。突風を浴びて、浮上して行く船もあれば、下りてくる船もあった。僕達
は、歩いて街の中に入った。清涼な川が運河に流れていた。入り口に、入り江
があった。観光船は無く、人々は、古代の建築物を眺めていた。草や木もわざ
と生やしていた。オシャレ感.のようなものだ。店は、運河に沿って並んでい
た。自然現象は、都合のいいものだけ、そのまま起こそうとしていた。桜…桜
は、奥の奥の、北の1通り建築物がお披露目を済んだ後にあった。冬なのに桜。
桜の花弁が散って、その1枚が薄い香りを感じさせ、遠い梅を思わせた。皆が
進んで持っている竹製の油を塗った傘。若い2人の女性が笑い合って、桜の花
弁が茶屋の赤い.物の椅子に落ちて、静かに乾いた。
春…。桃色から白色へ。景色(何もかもある世界)がある。「宗教国スギミ
ダ」はそういう国だった。茶屋と運河。時代を…感じさせない。川の水が小石
を流れ、.の滑りを胸に落とす。養殖した岩魚がその様子をじっと見ている。
春…。真新しく見える固まった景色と、新しく出会う時間。明るい永遠と、地
面の擦れ擦れを接着する、.来。川を見て、みんなと見て、橋の端の穴の開い
た壁に肘を突いて、手で顔を支えて、.来を見ていた。僕は.来を、「ソンパ
ラメードの森」を見た。みんなに祭られている「ソンパラメードの森」。今日
はソンパラメードの前夜祭だ。僕達が聞いていた祭囃子の笛の音。太鼓の音と
電球の灯り。森の、階段の、祭壇の、ソンパラメードの祭りの空間に向嘗て、
意識が走っていった。世界中からこの行事を楽しもうとやって来ている。駐車
場のビルの何千もの煉は、満杯になっていた。ライトエアマシン用の高速道路
は、IC付近でいっぱいだった。僕の妄想を掻き消すように祭囃子は鳴る。鉢
巻きや、薄着の織物なんかを着て、髪を側後部刈上げて、エネルギッシュな男
や女は、季節を夏にした。蝉のいる7月下.か8月上.。赤い.物を取っ払っ
て店にしまい、服装を変えない者は腕を捲った。蛙は背中の油を失ってしまっ
たようだ。ゲコ。なぜ膨らむ? 僕は別行動がとりたいと言って、みんなと別
れた。
柳が垂れていた。やっと完全に会えたなと思った。午後3時だった。瞼は、
夕闇に濡れていた。人を抜かして、段差のある河川.に下りて行った。
昼早くから線香花火をやっていた。家族連れだ。父と母は笑い合い、線香花
火を見ていた。弟らしき男の子と、お姉さんらしき歯の曲がっている女の子は
父と母に花火を見せていることを楽しみに思っているようだった。もう1人の
子供は、まだ幼く、滑らかな石に座って、煙を口で1杯に吸って、線香花火を、
キョロキョロ顔を見ながらやっていた。他の家族も川で花火をやっていた。美
しい夏風流だった。陽が小石に当たって、眼を焼き、僕の疲労の陽の熱は下瞼
の膨らみに溜まった。体温が鼻から尻の上の背中まで下がって、足元から睫毛
…へ、風が吹き上がった。
川のせせらぎと家族達の笑い声。夕日の光は流れて、心を落ち着けさせた。
余計なものだと感じた祭囃子の音は、暗い夜の闇の膨らみに当たって伸びてい
った。僕の瞼は冷たくなった。耳元を過ぎて風が通った。髪が巻き上がった。
僕は無意識の内に、見かけた美しい女性に似せていた。石に座って、いなくな
った川原を見ていた。時刻は午後5時だった。時計は、飛んで地上に知らせて
いた。まだ気温は暑かった。
「花火があるよー」
と言って、10代ぐらいの.女と9歳ぐらいの女の子は、駆けて行った。手
に昔の水風船を持って、元いた場所にゴムを伸ばして、
「行こうー」
と言って、走って行った。彼女は犬の散歩をしているように見えた。僕は河
川.を上がった。ソフサラコマは売店にいると考えた。他の者達は、固まって
何処かを見物していると思った。僕は歩いた。空がオレンジ色から暗く、ギャ
グで.き詰められた砂利のような角の丸まった小石は、僕が動くと降りたよう
に思えた。仲間達は、「テーロデーラ教会」にいた。お参りして、済んだみた
いだった。観光実が大勢出てきた。僕達は運河に戻った。運河は4つあった。
日が西に傾いた空を見た。空が日を.中にあるとして、落ちてしまっていけば
いいと思った。
ファナティックなカーニバルだった。…世界中のハイテクな乞食を集めて、
彼らの人肉を食い荒らす、カーニバル。岩壁には、磨崖仏が幾つもあった。
「ソンパラメードの森」の外側をぐるっと包む、磨崖仏の岩壁に祭殿の入り口
が向いて、ばらばらに点在していた。殿堂が森の入り口にあって、盗賊団の手
下が稲荷で油揚を供えていた。提灯の灯った出店では、人間がその場で肉を削
がれて、油揚に乞食の肉を詰めて、串に刺して焼いていた。匂いの煙が流れ、
ぶ厚い岩壁の外には、遺産クラスとなった、教会や寺院、聖堂が灰色の夜に見
えない空に伸びていた。
「この奥にパパロメ王女がいるなんて…考えられません…」
ダビャーズは緊迫感を持って言った。
僕達は、ジョイントで変装し、気配を消してこの階段までやって来た。夜に
月が出ていて、静かだった。暗い。
「残酷な祭りです。人々だと思ったら、悪魔達のお祭りです」
ジョンプは言った。
岩を削った階段を上がった。
「ソンパラメードの森」の周りを、メリーゴーランドの木馬が回っていた。
上下に移動しながら心臓を止めた表情で、回転していた。火はセピア色の火だ。
守られた神秘的な竹の森。
「エスニカリカルの撒いたジョイントの結界です。ほら、ここにウルトラマリ
ンの石が」
ジョンプは宝石のような石をぱらぱらと落とした。森を覆っている海水の輪。
森に流れている川は、海水のものだ。マングローブがギギギギ…と、音を立て
て風に揺らめき、遠くで波の音が聞こえていた。突き抜ける空。特別な場所。
.内にいるような森。
「ソンパラメードの島」を進んで行った。森だ。盗賊団が出てきた。下っ端
だ。3の歩兵はたくさんいる。鉄のブレードを右腕に嵌めた狐共がわんさか溢
れてきた。調査員を隠し、僕達は戦闘の構えをした。森が動く。闇が冷たく狐
達は駆ける。冷たい.の降る森。僕達は動かずに済んだ。景色が勝手に動いて
くれる。僕はブレードを出した。骨に近い剣のようなブレード。下へ振り払う
と、盗賊団は2匹、浮き上がって、胸から血を吹き出した。ラロレーンは、地
面に両手をくっ付けると、狐をまとめて殺した。
森の中心の祭壇まで行くと、パパロメ王女とセネアトレクと、ルルルフ姫は
どこにもいなかった。蔓の巻かれた白い牢しかなかった。
「どこだ!?」
ラロレーンが叫ぶと、突然、無傷の狐がやって来て、
「パパロメ姫もセネアトレクもルルルフ姫もエスニカリカルに水の落ちる崖の、
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史