ジェスカ ラ フィン
ラロレーンのピアノが1つ、浮いていた。乗れと、いうタイミングで蓋をパ
カパカと鳴らした。
「何処に連れて行く気だろう?」
ソフサラコマは1番前に立って、眺めていた。しかたなく皆と相談してグラ
ンドピアノの中に乗ってみた。
「沈まないかな…」
ぐらぐらとしたが、誰も落ちなかった。「パンクチュアル号」と内側に書い
てあったグランドピアノは、足を折ると進み始めた。誰かが何処か1部分を折
って漕ぐのかと思っていたが、自ら「流通国パシキゾーフ」の高速道路の無い
何かの飛行機の離陸場が沿って走っている「娯楽国ホケメダン」の海岸を見た。
グランドピアノはゆっくりと、進んでいった。しかし途中から速くなった。
「どこに進んでいくんだろう?」
僕が呟いて景色を眺めると、蓋は一度だけパカパカパカ…と開いて、
「ターピスの小島…」
と聞こえた。波の高さは良く、風も海の香りも空に浮かぶ雲も上々だった。
4日かけて午前頃に島が見えた。腹が空いた時には「商業国コラダングス」や、
近くの小島に住んでいる人々の所に自動的に行って、食事を貰ったりした。
睡眠はグランドピアノの上でとることが多かった。しばらくして「ターピス
の小島」に着くと、ピアノはブカブカブカ…と沈んでいった。
「ありがとうピアノさん…」
ソフサラコマは白ハンカチを振った。
「おそらくグランドピアノはジャングルを通って、天上世界、『文明国スワン
ダ』に行け、と言っているのでしょう」
ウィズウィングルはペンダントをチャラチャラと鳴らして答えた。グランド
ピアノを振り返らずに、僕達は砂浜を上がり、町を目差して行った。
「『ペクノの灯台』、泡の橋がありましたよねぇ…」
ラロレーンは言った。ここは2500年経っても、あまりあの時と変わらな
かった。牢獄の島というだけはあったのか。
町で昼食を取り、道に出てジャングルの中に入った。
「ここはバートンが死んだ場所だ…」
僕はふと思い出した。
夕暮れ過ぎに「ジャトジャス遺跡」に着くと、遺跡をゆっくりと見て回った。
中に入り光の階段を上がった。光が洩れると、命の神殿に着いた。ネルスがい
るかと思ったが、いなかった。代わりに兎がいた。兎は、
「この先は『文明国スワンダ』です」
と言った。あとは何も言わなかった。神殿の中は.来の機械でいっぱいだっ
た。
僕達は大理石の柱の間から遥か空の雲の海を見、文化が究極的に進んだ眼前
に.かれたスワンダを見ていた。4km先に街が見えた。その間までは雲の床
があった。僕達は雲の水蒸気に包まれながら、歩いていった。辺りは飛行機産
業の工場でいっぱいだった。色んな所を覘くと、ドラゴンや人間達が齷齪と働
いていた。灰色やくすんだ色のドラゴンが多かった。ボディーにバルサ部分や
キャノピーを溶接し、塗装し、エンジンやメカを作って積んでいた。タイリュ
ーの住んでいた、「トヤランズ城」に行ってみると、霧で町は消えてしまった。
城の扉を開けると、案の定霧に包まれた。シャンクスは居ず、「チャンダング
図書館」もなかった。ひたすら歩いた。ここでは何も産業は発達してませんよ、
というような気分にさせる雰囲気があった。例の赤い制服を着た鼓笛隊がター
ンをしながら飛び跳ねて駆けて来た。吸い込んでも水滴にならない霧だった。
タイリュー王のいたベッドのある外の裏庭の2つの燭台は燃えていた。シャ
ンクスは後ろ向きで背を見せて立ち尽くしていた。僕達の足音に気付くと、ゆ
っくり、首を曲げた。
「…どなたですか? 『流通国ファニアータル補給艇』は移動要塞にすること
もできる補給塔です。…宗教行事の『宗教国キササパルス』ですか? 2500年経った今でも、大祭はやっていますよ。『宗教国キササパルス』は、『宗
教国スギミダ』と名を変えました」
とシャンクスは喋り終えると、僕とソフサラコマを見て目を大きく開いた。
「…もしかして…あの時訪れてくれたエクアクス君とソフサラコマ君ですか?
お久し振りです!! 私です、シャンクスです!!」
眼鏡をかけたシャンクスは涙ぐんでいた。
「おい、末当に、シャンクスかよ…泣くなよ…」
ソフサラコマはシャンクスの肩を叩いて、一緒に泣いて励ましていた。
「私のことを.えておいてくれたあなた方は、あなた方の時間の中で、私を生
かしておいてくれたのです」
シャンクス言った。
「ネルスの子孫は何処にいるんですか? それと、残された盗賊団は?」
「リギーは、数千年前に『機械国ルチャーナ』の1部の工場が移された、橋の
架けてある『トーモの小島』の、『スワンダ飛空挺基地』の偵察飛空挺の操縦
を、ネルスの子孫であるスワンダ政府調査委員長ニランガに任せて、王の時の
止まった夢しか語らない王女、ルルルフを人質にして、『デンザの島』に出発
したのです。此処はリギーによる法治国家ですから、天体のデータや世界のデ
ータは自由に見ることができないのです。私達ドラゴンでさえも、怖くて水の
落ちる崖まで行くことができないのです」
シャンクスは手を伸ばして羽を広げて骨をボリボリと鳴らして肩凝りを取っ
た。
「取り敢えず私達もリギーを追いかけましょう。そのあとに『宗教国スギミダ』
の祭りに行ってもいいですから。『ストランダ管制区管制所』を訪ねて、調査
船の使用許可をもらい、スタッフを雇うために街の『ダビャーズ科学研究所』
に行きましょう」
シャンクスは歩いて行き、扉を開けた。霧の中を通って、鼓笛をかわし、出
口に出た。
街の北西にある「ストランダ管制区管制所」へ行って、東にある「トーモの
小島」の橋を繋げてもらうようにお願いした。「トヤランズ城」のシャンクス
とだけあって、融通はすぐに効いた。それから街の.東にある「ダビャーズ科
学研究所」に入った。中に入ると、中年の男性がシャンクスと僕達を見て両手
を広げた。
「シャンクスさんと英雄さん達じゃないですか!! あなた方の記録は全て、
2500年間保存されていましたよ!! 盗賊達は時間を失って、凍死してい
たようです。ギュリュフに最初にゲームに参加させられてからルールは変わっ
ていませんが…。記録上ずっとそうです…すみません。あなた方が盗賊団を倒
したことによって、時間が制限されていたのでしょう。盗賊団を全滅させたら、
この世界は2500年前に戻り、あなた達には会えなくなってしまいますが、
盗賊団を壊滅させるまで、頑張りましょう。気象庁の調べによりますと、直径
3476mの満月が、もの凄いスピードで此方の世界に向嘗て来ているようで
す。ホメネカが、月の上に乗って私達か、盗賊団が全滅するのを待っているよ
うです。嫌な奴ですね。裏切り者です。1番弱い盗賊ですから、なんてことな
いんですが。盗賊団のリギーが、タイリュー王の妹君のパパロメ王女様とセネ
アトレク様の娘様であるルルルフ姫様を誘拐したのです」
ダビャーズという中年男性は言った。
「どこに行ったんですか?」
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史