ジェスカ ラ フィン
グランプリの授賞式は、此処、『娯楽国ホケメダン』で行わせていただきます。
それでは一般人部門の発表に移らせさていただきます。…では、エントリーナ
ンバー1番、ジョルト・トメンカーブランドの、フイダー・トメトットさんの
入場です!! …ではどうぞ!!」
エントリーされた方々が次々とステージに出ては、真ん中で回り、フラッシ
ュを浴びて、ステージを過ぎていった。
11 浮遊船エスピショー
軽やかな音楽がかかり、モデル達が歩き回り、出っ張った土台に出て、ポー
ズを取って、フラッシュを何発も叩かれて、喝采を浴びていた。司会者の暖か
い言葉が飛び、スポットライトが司会者とステージに白く当たっていた。手に
持っているメモ用紙が光を当て過ぎて燃えてしまうのかと思った。きつく絞め
られた襟の隙間に汗が溜まっていった。とうとうマスラトッチーの出番が来た
ようだ。
「それでは、最後になります、エントリーナンバー22、ペンパタナンズブラ
ンドの、マスラトッチーさん!! それではどうぞ!! お入り下さい!!」
陽気なブラック&ブルース音楽が響き鳴り、打ち込みの音に合わせて彼女が
他の人の動きを真似したのか、係りの人に教えてもらったのか、両足をクロス
させて、堂々と、大股で手を振りながらステージの白い通路を歩いてきた。肌
が艶艶としていて、歩く時にてかった太股が重なって滑りながら着地して、軽
やかに上げた。人々はフラッシュの音に合わせて驚いた。踵の先の1角が視界
に入った。踵が光って、モデルに変身したマスラトッチーはくるっ、と後ろに
返って、さっ、と歩き出した。フラッシュが何発もたかれた。何台も横に並ん
でいるスポットライトが光り、ステージのシルクの色を印象付けた。裾がひら
っと揺れた。フラッシュが微かにまた飛んだ。
R&Bが終わり、彼女が歩き終わると、穏やかな音楽に変わり、司会者が紙
を鳴らす音が聞こえ、白い封筒を受け取った。
「…結果発表です」
彼は微かに笑って、漆を塗った黒のおぼんに置いてある銀製の赤いリボンを
巻いた鋏を取り出して封筒の中身を見た。会場が鳴り止み、1番奥の席から見
ると、まだ慌しい音を立てている人達がいた。唾を通常の速度で飲み込む間が
あり、司会者が中央に立って下を向いて返事をしようとした。
「…エントリーナンバー22、マスラトッチーさん!!」
会場から拍手が溢れた。熱い拍手に包まれて、照明が明るくなって、下手か
ら照れて笑って出てきたマスラトッチーが髪を耳の方に掛けて、司会者のとこ
ろに歩いていくともう一度髪を耳に掛けた。
彼は笑って、眼鏡の縁の下に黒い溝を作った。僕は目を疑った。チョコクロ
ワッサンを司会者が持っていて、尖った先端を口で吸って、煙を吐いた。
「受賞おめでとうございます!!」
「あれを見てよ!!」
ソフサラコマは司会者に指を指した。
「チョコクロワッサンから煙が出ている!! 間違いない!! あいつはギュ
リュフの変装だ!!」
授賞式の催しはずっと続いていた。他の人には何も彼の手、指の間に見えて
いないようだ。司会者とマスラトッチーの弾んだ会話が続いた。
僕達にはジョイントを溜め始めたギュリュフのマイクの持ち方が奇妙に映っ
た。
「それでは各社協賛の記念トロフィーと、金貨を会社の社長方から受け取りま
しょう。そして、1億ワークンを『娯楽国ホケメダン』、トバラス王から授与
されます」
トバラスは歩いてきて、実席に手を振って、4階にいる僕達をわざと見ない
ようにしていた。髪の毛のないトバラス。部下から金貨の袋と、小切手を貰っ
て花束と盾を受け取っていたマスラトッチーに軽い足取りで金貨の袋と小切手
を渡した。正面を向いて胸のメダルを輝かせた中年のトバラス。どこか実席を
見つめ、目の影の溝から憎しみと、尖った歯を見せた。
「それではスタッフの皆さん、実席から降りて来てステージにお上がり下さ
い!!」
ギュリュフが変装した司会者は笑顔と明るい声質の裏に、欲望が渦巻いてい
た。僕達は、
「行くぞ…」
と口々に声を掛けて、ゆっくりと、4階から3階、2階から1階へと降りた。
人々の拍手の中、僕達は花束を持つ女性達に出迎えられて、ステージに上がっ
た。僕達は怒りを堪えていた。両方の拳にジョイントを溜め、ギュリュフがト
バラスに近づくのを待っていた。
「それではスタッフの皆さん達に小切手と、トバラス王から握手を頂きましょ
う!!」ギュリュフはマイクの柄を伸ばして、そろりゆっくりと、杖を伸ば
し始めた。
「もういいよな…。お前の正体はバレているんだ!! デボズルジ!!」
僕がそう叫ぶと、トバラスは顔をスポットライトでできる影に顔を隠し、肩
を、首を高く上げて、正体を現した。スーツが破け、全身黒と赤茶色の斑模様
の鋼鉄の鎧を纏ったデボズルジが人差し指を指してマスラトッチーを人質にし
た。司会者は服が脱げて、道化師が出てきて異常な猫背をして唇の端がつり上
がって、両頬の群青色の星が印象的に頬の筋肉で曲がって、更にマイクを伸ば
してナイフを出して、持ち上げられるみたいに天井近くへ上がった。デボズル
ジだ!! と自分で声を上げ、両腕から鋼鉄の細長いブレードを出してマスラ
トッチーをステージの奥に突き飛ばして、実席から悲鳴を上げさせた。ギュリ
ュフは空中から言った。
「これから轡虫のデボズルジのショータイムだぜ!! ヒーヒャッホーゥ!!」
「俺の能力を見せてやる!! 行くぜ!! ジョイント!!」
ステージのカーテンが勢いよく閉まり、勢いよく開いた。舞台の外は何処か
のボイラー.に移っていた。爆発すると、テレビ局のスタジオセットのテレビ
カメラなどが置いてあるのが見えた。高貴な鎧のデボズルジは、体中の間接と
いう間接部分から、蒸発する煙を出した。
「お前達はホールから『エンパーン・カジノ』の裏のテレビ局に移動させられ
たんだ!! ここでとくとお前達の力量を量ってやる!!」
いつの間にかギュリュフは居なくなった。僕達は構えて僕はブレードを出し
た。デボズルジが肩の鎧を上げてブーストを放射させた。手を開いて、ブレー
ドに風を当たらせた。そして両手に力を溜めた!! 突然ジョイントで置き時
計を具現化させて、ギロチンや3日月の槍や断頭台が置いてある13階段のあ
るスタジオの「シュワイニ・ホロコースト」の処刑場だと思われる場所の床に
砂を落とし始めた。
「日を、計測しないんだ。ここでは公開処刑が毎日公開されていた」
僕達はブレードで時計を薙ぎ払った。しかし時計は壊れなかった。スタジオ
の置時計の針の数字が全て0:0を示していた。デボズルジの横に立っている
身長程の時計は12:12を指していた。
「君達の体力は11になる。そういう決まりを作ろう」
「デボズルジの体力は1212を示しています!!」
ペリンガは言った。時計のばねが弾けた!! ウェズングルは胸を爆発させ
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史