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ジェスカ ラ フィン

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きな小屋の扉の前に立って、トントン、とノックをした。

お婆さんが出てきた。ちゃんちゃんこを着ていた。

「なんですの?」

レヌダというお婆さんは鼻を膨らませた。

「あ、あの、.はこちらの牧場に伺っていると言うファイデさんを探している
のですが」ウィズウィングルが言った。

「お邪魔しておりませんでしょうか?」

レヌダは曲がった腰を伸ばして、両手で拳を作って軽くポンポン、叩いた。

「お邪魔してるかしてねぇか、ファイデに聞かねぇと分からねぇ」

レヌダは言った。

「何だ? 『ロッダ養鶏センター』の者か?」

「いいえ、違いますよお婆さん」

ソフサラコマが.しレヌダを客めた。

「この地方で、ファイデさんは何をやっていらっしゃるんですか?」

ソフサラコマの顔を見てニッコリしたお婆さんは杖を後ろに持っていって話
した。

「まぁ、牧畜や養蚕が盛んですねぇ。養鶏や養蜂などもやっていますね」

「もしかして、息子さんって、ファィデさんのことでしょうか?」

カンの良い、ペリンガが言った。

「ファイデなら、後ろの紡績工場に行っているんじゃないかい? 何だかさっ
き、用がある、って言って出て行ったから」

レヌダは杖と体でその工場に振り向いて、示した。

「もしやコンテストの服のことかい? ファィデに頼んでたドレスってやつ
の? ならファィデの所に行って今すぐ頼みな、全然お実さんが来ないから、
他の作業と準備をして来ると言って、工場に篭っちゃったよ。すぐ後ろだよ、
行って来な」

レヌダは僕達を急かした。




.の付いたステーションワゴンを動かせて、後ろの光の灯った紡績工場に止
まった。扉を引いて中へ入ると、1人の若い男性が糸繰り機を動かして、テー
ブルに肘を突いていた。

「すみません」

僕が声を掛けると、若者は飛び上がって、僕達の方向を向いた。

「末日はどのようなご用件ですか? 紡績か、鶏のことなら、明日以降にお願
いしたいのですが…」

ファイデという若者は言った。

「いいえ、違います、ホケメダンで、オートクチュールを注文した者です。明
日の、ホケメダンで行われるコンテストに出品する、特製のドレスを作っても
らいたいのです。今日中に仕上げてもらわないと大変なことになります。タグ
にはペンパタナンズと入れて下さい」

「あの、これ…デッサンです」

ウィズウィングルがデザイン紙を差し出した。

「あぁ、私は店でもらいましたよ。店の方が忙しかったのであまり事情を聞い
ていませんでしたが。大丈夫です。明日の朝までに間に合いますよ。コンテス
トは何時からですか? 船で行けば、きっと間に合うでしょう。絹地は持って
きてくれたんですね」

「これです」

ラロレーンはファイデに渡した。

「うわぁぁ…すごい…。こんな美しい金紗の絹地は初めて見ましたよ。これで
オートクチュールを作れば、完璧なドレスを作れますよ」

ファイデはさっそく台に絹地を広げて、織り目をちらちらと見比べていた。

「…あの噂の盗賊団の金・銀のホメネカの糸だ、これさえあれば、すごいドレ
スが作れますよ! 今から女優さんのサイズの書いてある紙を持ってきます!
待っていて下さい!!」

ファィデはFAX用紙を持ってきて、テーブルの上に広げた。ピンクの色ペ
ンで定規を使って横に引き、縦にも引いて、裁縫鋏で切った。縫い目を合わせ
て留め針で止め、縫い代を浮かせた絹地を2つ、拵えて、ミシンの台を奥から
持ってきて、仕付けし、末縫いの準備をした。袋縫いをして、返し縫いをして、
チャックをつけて背縫いをし、伏せ縫いをして、手縫いに移った。ソーイング
セットの入った大きな鞄から、フリルや装飾に使うものを縫い合わせ、ブラン
ド名を入れ、4時間後に特注のドレスが完成した。

「僕も『娯楽国ホケメダン』について行きますよ。女優に着させてから、仕上
げましょう」


ファィデはそう言い、ケースにドレスを入れた。僕達は足早に彼を車に乗せ
て、港へ向かった。



翌朝、「娯楽国ホケメダン」のシンボルのタワーが見えた。フェリー船は煙
を吹かせて、港に到着した。

車をチェーン店のレンタカー店で返すと、始発のモノレールに乗って記念館
の町へ行った。ドームがあり、アリーナがあった。朝の日で光り輝いていた。
記念フォーラムの前の広場では、すでに各都市から来たお洒落な格好をした
人々が階段を見上げ、入り口が開くのを待っていた。婦人が多かった。

数時間後に入り口は開いた。中に入って奥の受付にドレスを預けて、僕達は
服を買ったりもう一度映画を見たりして「娯楽国ホケメダン」を観光した。



夜、ホテルに泊まって、「農業国ビザジズドー」にいるマスラトッチーに電
話を掛けてみた。

「此方に明日来ませんか? できればお母さんと一緒に。あなたのおかげで絹
地は作れました。明日は華やかです。お洋服はこちらでご用意します。余った
絹地を売ったお金で私達はタキシードを買うのです。発表式は明日午後5時開
場、午後6時コンテスト審査開始です」

「えっ!! 末当ですか!! 行きます! お洋服は自分で用意致します
わ!! 今夜午後11時半出発の『娯楽国ホケメダン』行きの貨実船に乗って、
行きますね」

「分かりました」

僕は電話を切った。



翌日、彼女が来る前に、抽選会の発表の前に、ドマノナに一度希望者の方々
の衣装を、着手仕上げをして、動いてもらうという催しがあった。ファィデが
呼ばれてチェックし、済んだ後に僕達のいる楽屋にやって来た。

「完璧です。ダントツで1番ですね」

ファイデは胸を張って言った。

「末当かい!?」

ソフサラコマは笑ってファィデの言葉を聞いて喜んだ。窓を見ると、外では
風船が飛び、賑やかな音楽がか嘗ていた。煙の虹が架嘗ていた。

午前10時ぐらいになると、コンテストの係の人がドアを開けてやって来た。
部屋の中に入って来て、ドアを閉めて口を開いた。

「他の方々に、主演女優のドマノナさんが取られてしまいました。抽選会で、
あなた方は、落選してしまったのです」


凶報がセッヂというコンテストの係りの者から知らせが届いた。

「申し訳ありません」

そうしてドアは閉められた。

「ど、どうするんだよ…これじゃぁ、全てが水の泡で終わっちまう…」

ペリンガはパイプ椅子の上で頭を抱えてうな垂れた。

僕達はその他のキャストへオファーして、衣装を用意しなければならなかっ
た。2部門あって、一般人部門と女優陣部門があった。

「ミシンがありません。頼めば、貸してくれることと思いますが、一般人部門
に移しても、減点の対象になりかねませんね…」

ファィデは額に手の平を置いて、悩み続けた。



昼になった。昼の皆の分の食事を、買いに行った、ファイデの帰りが遅かっ
た。

「おかしいな…、帰りが遅いな」

僕は不審に思った。

「どうしたんだろう」
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史