ジェスカ ラ フィン
っているおばさんがいた。話を聞いてみると、
「染料には、藍や、食紅があるよ。他には、繊維と同じように、植物や動物や
鉱物から採った天然染料や、石炭、石油から合成した染料や、作物染料がある
ね。ホメネカの金・銀の糸が『サーラムの葡萄園』から見つかったみたいだよ。
グランプリになりたいなら、やっぱり直接『農業国ビザジズドー』に行って、
そのホメネカの糸を見つけてくるべきだね。どこかの城の王が夢を見ている時
だけ、その葡萄園が光り輝き、金と銀の糸を空から降らせると言う。はっきり
言って賭けだね。コンテストまであと3日だろ? 無理だと思うね。『農業国
ビザジズドー』から古くから伝わる、『浮遊王国ルダルス』の伝説だからね。
小さい頃、図書館で巨大水族館という童話調の百科事典を読んだんだ。もちろ
ん、その見つかった金と銀のホメネカの糸は、『娯楽国ホケメダン』のトバラ
ス王が売ってしまったという話だがさ。きっと、その伝説を信じて『農業国ビ
ザジズドー』へ行けば、『サーラムの葡萄園』で見つかるよ。1か8か、で行
ってみなよ」
とランダメというおばさんは言った。
「分かりました。ありがとうございました」
僕達は挨拶をして、一度記念館の町に戻って、ウィズウィングルにそそのか
されて、娯楽国記念フォーラムの別館に行って、コンテストに出る、キャスト
のパンフレットを渡された。それから会場のホールに行った。その後僕達は映
画館に行った。
「参考に出演映画をご覧になさいませ」
と、セレクトしたドマノナの映画のチケットを買う時に、フロントの者はそ
う話し、パンフレットの中には女優のプロフィールや経歴が載っていた。
10 農業国ビザジズドー
主演女優、ドマノナの「マイ・アグリー・ガール」という映画を見終わると、
「主演女優、ドマノナにホケメダン演劇大賞候補作・授賞式特別ドレスをオー
ダーしたのですが?」
と、電話帳で調べた店、「ハダーランセ」に、ショッピングの町・歓楽街、
4丁目20番地の街角で、カラフルな電話ボックスから「商業国コラダングス」
へ電話でかけてみた。1分14枚コインだ。電話を掛ける前にカジノで遊んだ
のだ。交換しないと使うことができない。
「…お実様のご注文はホケメダン祭、の対象になります。プレタポルテのもの
で宜しいですか? それともオートクチュールのもので宜しいでしょうか?」
エッズという女性は丁寧な口調で尋ねてきた。
「えぇ」
と僕は答えた。
「オートクチュールのもので宜しくお願いします。ホケメダンのコンテストの
規定で、デッサンはラロレーンとペリンガというものがやっております。ブラ
ンド名は、?ペンパタナンズ?でよろしいですか?」
「えぇ」
とエッズは言った。
「ご注文はそれだけで宜しいでしょうか?」
「ファックスでデザイン紙をお送りいたします。FAX番号は…でよろしいで
しょうか?」
エッズは聞いてきた。
「念の為、こちらへモデルの方をお連れして来ていただいて、サイズを測りた
いのですが、宜しいでしょうか?」
「えっ?」
僕は戸惑った。
「そのような話は伺っていませんが…?」
「此方に来た話では、そのようになっていますが」
エッズは言った。
「ドマノナさんのサイズを洋服店で測ることが規約の1つであるのですが…無
理でしょうか?」
「.々お待ち下さい」
と断って僕は電話ボックスを出た。
「サイズを、直接女優を連れて行って測らないといけないらしい…」
「サイズはこのパンプレットにあるから、その数字を言っちゃいなよ」
とソフサラコマにそそのかされた。
「えぇっとですね、サイズは、…こちらに、サイズのパンフレットがあるんで
すが、えぇっと…」
「お番号でお願いできますでしょうか? …あ、はい、分かりました。…ご用
事でお越しできないのですね。このサイズでお作りいたします。後ほど、こち
らに布地をお送りいたして下さい。…ご注文、ありがとうございました」
電話が切れると、みんなに会話の内容を話して、モノレールに乗って、パー
キングタワーまで運んでくれた。車を降ろして乗り込むと、バートンの名義で
お金を借り、銀行の貯金が底を尽きかけていることを運転免許証の特殊な加工
をした黒い盤の部分が薄くなっていることから判断した。
「これを見てくれよ。貯金がもうすぐ無くなりそうだぜ。…ホケメダンのコン
テストまででギリギリだ…」
「必ずホメネカの金・銀の糸を手に入れて、…優勝しましょう」
ウィズウィングルは言った。
「娯楽国ホケメダン」のICを通って、4時間かけて「流通国パシキゾーフ」
に戻ると、
「『商業国コラダングス』へは、『農業国ビザジズドー』、『娯楽国ホケメダ
ン』からフェリーが出ていますよ」
と料金所の人間は言った。「農業国ビザジズドー」の方向へのICに入って、
外に出た。景色が最高だった。海の色が、空気の匂いが、植物や生物に満たさ
れているような感じがした。3時間後に、「農業国ビザジズドー」に着いた。
ICを出ると、いきなり一面花畑に包まれた。僕達はバイパスに止まって話し
合った。
「『サーラムの葡萄園』はどこ辺りにあるのかな?」
「街の市役所か何処かで聞いてみましょう。時間がありません! そして、
『機械国ルチャーナ』の業者に繊維を発注しよう!!」
「待って下さい! ホメネカの金と銀の糸はやはり『機械国ルチャーナ』に注
文するのはまずい。特別に、『農業国ビザジズドー』で、糸繰りしてもらえる
ところを探してみましょう」
「それがいいと思います」
話はまとまった。市役所に行って、「サーラムの葡萄園」の場所を訊いてみ
た。どうやら其処は、「農業国ビザジズドー」の観光地になっているようだ。
車を走らせて、西に向かった。暫く、広大な田園が続いた。走っていると、風
車が見えた。途中で山肌に入って、砂利道を通った。
「ここから乗用車の進入禁止」
という開けた地区から僕達は車を降りて、観光実担当の農家の人がやって来
て、トラクターに乗せてもらった。青い山の聳える牧場では、馬が数十頭飼わ
れていた。僕達は従業員に案内してもらうために、夢の葡萄園と告げた。
「『農業国ジザジズドー』伝統のF1レースはご存知ですか?」
スペーリという従業員は言った。
「いいえ、知らないです」
僕は答えた。
「サラブレッド競争から、フォーミュラーカーレースに人気が移ったのですよ。
でも、両方とも人気は衰えておりませんな。興味無いですかな」
スペーリは前を見ながら煙草を短くした。
「へぇ、『商業国コラダングス』では、仔馬を育てて、『農業国ビザジズドー』
へ競走馬として、巣立たせているのですか?」
スペーリにウィズウィングルは訊いた。
「はい。大体の馬がそうですよ。『農業国ビザジズドー』の重賞レースや国際
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史