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ジェスカ ラ フィン

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しそうだった。茶色いつるりとした円形の坑道を歩いて行くと、彼方から水の
滴る音が聞こえてきた。ジョイントでランプを点けると、喉の奥の水分が引き
下がっていくように感じ、見えた。

暫くすると、広い場所に出て、左手には、鉱脈が岩盤を走っていた。右側の
崖の下では、川が流れていた。工業用水か何からしく、.し茶色に濁っていた。
奥の方で水滴が落ち、川の水面の光が壁や鉱脈に反射して、光が揺れてきらき
らと輝いていた。

「ベロメ金坑」を出ると、外に出て、巨大空洞の中の谷に、町が挟まってい
るのが見えた。選鉱所と事務所らしきものがあった。細い岩の坂を下り、町の
中を歩いてみた。坑内の右側を走る、鉱石輸送や運搬などに使われたものとみ
られる、バッテリー機関車と鉱車が見えた。貨車もあった。向こうには金鉱精
錬施設というものもあった。大きく左折して、もう一度左折して、点呼所の先
の銀坑入口に入っていった。

坑道出口を出ると、奥に神社のある、精錬所の煙の亜硫酸ガスによって、お
そらくはげ山になってしまったと思われる、谷の山の上の施設があった。「ハ
チャネ銀坑」を出て「ギギルメ炭鉱」に入り、先ほどの谷々と同じように、天
井から外へ縦穴の開いている、石炭や炭坑夫やズリや貨物を運搬するために掘
削された立坑と入気立坑と排気立坑があった。「石炭露出場所」、と木製の看
板が貼ってあった。水辺の上に選炭場があり、貨車の乗ったベルトコンベヤの
通ったコンクリートの原炭ポケットがあった。川が流れ、前の坑道に続いてい
た。ズリ捨て山が3つあり、煉瓦の発電所と変電所があった。「高温熱水鉱脈
鉱床」と看板に書いてあった。人は全く居なかった。「アンラ銅坑」に出て、
壁づたいに歩いていくと、窪みの多い通路の端で、ぼた山が積もっていた。上
の方からはパワーシャベルやブルドーザーの音が聞こえてきた。セネアトレク
の建設現場が近いのか。ヘルメットが転がっていた。下からも聞こえて来てい
るようだった。シャベルやつるはしが落ちていた。しばらく歩くと、陥穽が
所々に開いていた。

山の中に入り、セメントがびちゃびちゃと散っている通路があり、ボンベが
転がっていて塞がっていたので、回り道をして、ドラム缶が前方に5、6個倒
れている「ポルゼ洞窟」の前に着いた。鉄材が重なってばらばらに倒れており、
鉄骨が中途半端に立っていて、クレーンが立ち、ドラム缶が大量に積み上げら
れて山のようになっていた。巨大なジャッキがあり、滑車が遊園地のスペース


ぐらいあった。伝説の機械巨兵セネアトレクは、胴体と左手と右足が繋がって
いて、右手を曲げて、末体を左足に近づけて、接続しようとしていた。巻き上
げ機をもの凄い動力で動かし、クレーンで胴体を上げていた。火花が吹き、
「ルチャーナ」の科学者や技術者達が盗賊団の下っ端にサーベルで叩かれて、
びくびくしながら働かされていた。巨大ポンプを動かし、末体の管の中に循環
させ、円滑油を掃除機ぐらいの大きさのスポイトの機械で、接続部分や間接部
分に注していた。天井に吊るされた鉄橋にはギュリュフと、ルトワーゼと、ダ
ンドルズが立っていた。彼らは部下に囲まれていて、笑い声が聞こえた。金属
が擦れ合い、呻き声が鳴り続けていた。鉄橋の揺れ、鉄材の動き、何処かに激
突したような音が聞こえた。キューポラや溶解炉や反射炉や溶鉱炉から熱い金
属のジュースが出てきた。それらのせいで、無性に暑かった。みんなゴーグル
をして、作業服を着て、ヘルメットを被って軍手をしていた。ソフサラコマが
動いて隠れようとすると、ギュリュフが杖を上げて不気味な笑みをこぼした。

「あとはセネアトレクの頭部と心臓だけだな!! これで我が盗賊団は、『パ
シキゾーフ』を占拠し、『ホケメダン』を末拠にして世界征服ができるぞ!!」

「さようでございます、ギュリュフ様」

ルトワーゼは膝をついて言った。

「頭部、心臓のありかを知っている?ホメネカ?を怒らせて、頭部を見つけさ
せればいいのです。あいつの眼は遥か『浮遊王国ルダルス』の『バンダラ天文
所』の天体望遠鏡よりも高度なのだと」

ギュリュフは笑った。

「なら、今すぐホメネカを怒らせてまいれ。奴の居場所を知っているのはルト
ワーゼ、お前だけのはず」

「さようでございます。しかし、当のホメネカは、あの、月の上でございます
…どうしたらよいものか」

「伝説の蜘蛛といえば、あのホメネカだな」

「北の『チャンチャランダの島』に、マラダラの巻物というものがございます」

ヘレーガが言った。

「リギーとデグズーファントルのいる『チャンチャランダ』でございます。お
そらく滅茶苦茶なことをやっていると思います。情報部員の情報ですが、リギ
ーとデグズーファントルは、マラダラの巻物とこの世界への入り口である森の
ことも知らないのです。その巻物を、取りにいかなければなりませぬ。なぜな
ら、その巻物は、『ソッチョルゾ城』の最上階にあって、私達の部下では到底
辿り着けませぬ」

ギュリュフは顎に指をついて考えた。


「よし、なら、ピーチュアルをチャンチャランダに行かせよう。さぁもう派遣
した。あと1週間はかかるな。私達は『ホケメダン』に行って、轡虫のデボズ
ルジに挨拶にでも行ってこようか。国王に変装していることを忘れているわけ
ではないだろ? 私の言ったジョークとは、カジノで女共と暴れまわっている
だろうさ、ということだよ。ハハハ、あの国家は世界最強だからな、私が次期
盗賊団棟梁になることを見抜いてないらしい。適当に付き合って、私のセネア
トレクが完成したら、殺すつもりさ」

ギュリュフは咳払いをした。



洞窟内部は建設作業の物音で再び満ち始めた。しばらく時間が経って、首を
動かしていたギュリュフは右横を向いた時、小さな白いソフサラコマに気づい
た。

「もう隠れていても無駄だ」

「…うん? なんだソフサラコマ君じゃないか? 『トラヤンズ城』へ行った
んじゃなかったのか? 連れの彼はどうした? まさかタイリュー王に殺され
たんじゃないよね?」

「道化が…。お前は僕のお父さんとお母さんをどうしたか知っているな?」

「ふん!! 俺様が鍵を握っていることは気付いたか。まぁ、俺達に勝ったら
教えてやる」

ギュリュフは鼻で笑った。

「わざわざタイリュー王に聞くことじゃない!! お前を俺が抹殺してや
る!! 世界を平和にするんだ!!」

「へへへ…なんだ。ご馳走のほうが旨そうじゃねぇか? 俺の拳法でちょっく
ら痛めつけてやるか」

首をコキコキと鳴らしてダンドルズは嘲笑う顔をした。

「こいつは俺が逃がしちまった兎だ。前の分もたっぷりとお返ししてやる!!」

「そうはいかないぜ。ジョイントが僕を味方しているんだ!!」

「なら、仕方あるまい!! 殺してやる!! …ハァァァァ、行け!! 手下
共!! ウラァァァァ!!」

ブレードと刃が刀のように長いトンファーを両手につけて嵌めた忍者木人形、
作品名:ジェスカ ラ フィン 作家名:丸山雅史